第33話:【お見舞い】
今日は休暇だ。アンナと二人で食事中、俺は思いついたまま言った。
「この後、葵のお見舞い行こーぜー」
「あ! いいねー! 行こ行こ!」
◇
警察関連の病院。個室に入ると、葵はベッドの上で分厚い書類に目を通していた。
「足の怪我どう? 治った?」
「……まだ治ってないに決まってるでしょ。抜糸もまだよ。いいわね貴方は、すぐ再生するから」
相変わらずのトゲがある物言い。でも、顔色は悪くなさそうだ。
「なんだよー、怒ってるのか?」
「……なんでお見舞いの品が1000mlの牛乳なのよ。しかも紙パックのまま」
牛乳は嫌いだったのかな? 次はコーヒー牛乳にしよう。
「……次、コーヒー牛乳だったら対ナノマシン弾ぶち込んでやるわ」
先回りされてしまった。
「ところで、アキラは来たの?」
俺が尋ねると、葵は少しだけ表情を和らげた。
「ええ、前線へ行く直前までは来てくれたわ」
少しだけ寂しそうだ。強気な葵でも、やっぱり相棒が遠くの戦地へ行くのは堪えるんだろう。
「アキラ、相棒だもんな。こういう時に傍に居られないのってキツイよな」
「ええ、心配よ。彼の事だから無茶はしないだろうけど……」
「この人は無茶するよー! バカだから!」
おい、ちんちくりん。一言多くない?
俺は気になっていたことを聞いてみた。
「日本軍にナノマシン兵っているの?」
「ええ、元々軍の技術よ。それぞれ得意分野を持たされているわ。でも、再生特化は珍しいわね」
「俺って珍しいのか」
「ええ、かなり。聞いたことなかったもの。恐らく実験段階か最新のタイプよ」
だから高槻博士はあんなにしつこく採血したがるのか。
「私、採血なんてたまにしかやらないもん」
アンナの言葉に、俺の特別扱い(実験動物扱い)が浮き彫りになる。
「ところで、女リーダーは見つかったの?」
「いや、今は雲隠れしてるよ。情報も全くないみたいだ」
「不気味ね。相当食えないやつだわ。……怪我が治ったら、あなた達に合流できるよう頼んでみるわ」
「アキラの方じゃなくていいのか?」
「彼なら大丈夫よ。それにこの怪我じゃ、あっちの戦線では足を引っ張っちゃうものね」
葵は自嘲気味に笑った。
「……それまで、死なないでおきなさいよ、二人とも」
葵は高槻みたいなトカゲ野郎と違って血の通った人間だな。




