第32話:【再生】
「二人とも血塗れだね。それに裕くんに至ってはボコボコじゃないか」
基地に戻るなり、高槻博士が驚いていた。
「ええ……なんか、時間が経ったらどんどん腫れてきて」
なんか水木しげる大先生が書く妖怪みたいになっていた。妖怪・不死身男
「裕、大丈夫? 高槻、なんで裕の傷が治らないの?」
アンナが必死に食い下がる。
「ふむ、調べよう。こっちへ来て採血から始めようか」
◇
「コアのオーバーヒートだね。短時間に再生を繰り返しすぎて、ナノマシンの処理能力が限界を超えている。食事を摂って安静にしていれば戻るはずだよ」
検査結果を聞いて、俺は心底ホッとした。
「このまま治らないかと思いましたよ……」
「ここまで短期間で凄まじいダメージを負った検体は初めてだよ。いいデータが取れた。……ああ、もし治らなかったら再手術だから、そのつもりで」
「それ、麻酔効きますかね?」
「ダメージが治らないということは、解毒作用も低下しているはずだ。効きすぎるかもしれないね。君らナノマシン兵は終わった後、縫合しなくても勝手に塞がるから楽でいい」
「……楽とか言わないでください」
やっぱ高槻だった!トカゲ野郎め!
◇
「裕ー! 大丈夫だった?」
医務室の扉を開けると、アンナが床に座り込んで待っていた。
「うん。飯食って寝てれば治るってさ」
「うむ。二人には休暇を言い渡す。とりあえず3日だ。裕くんに変化がなかったら再手術を行う」
「あ! じゃあご飯行こ!」
「カレーライス食べたい」
「私もお腹空いちゃったー! いつも狙撃ばっかだから、再生って疲れるね!」
「……俺、再生する時あんまり疲れないんだけど。本来疲れるものなのか?」
「そうなんだ。やっぱり再生特化だからかな? 便利だね!」
「便利っていうか、不気味だけどな……。あ、王に打たれたところが熱持ってジンジンしてきた。早く行こうぜ」
この日はCoCo壱でカレーを食べた。
俺の頼んだ納豆カレーを見て、アンナが少し引いていた。美味しいのに
◇
その日の夜。泥のように眠ってしばらくした後、無事に再生が始まった。
だが、再生にも激しい痛みが伴う。折れた骨が内側から音を立てて繋がるたびに、俺はベッドの上で悶絶した。
◇
「あ、裕、無事に治ったねー!」
翌朝、アンナが顔を覗き込んできた。
「……ああ。夜中、治る時の痛みで目が覚めて、すっかり寝不足だわ」
「無事に治ったね。また採血させてくれ」
高槻に促され、俺はまた検査室へ向かう。
◇
「検査の結果だが、ナノマシンとの結合率が異常に高くなっていたよ。何か身体に変化はないかい?」
博士がデータを見つめながら問いかけてくる。
「そう言えば、勘が鋭くなったかもです」
「それは多分、死線を超えて現場に順応したからだね。他には?」
「うーん、身体能力が上がったかな、と」
「それは訓練の賜物だね。……他には?」
「わからないです」
「そうか。何か変化を感じたらすぐに教えてくれ」
結局、本気で心配しているわけじゃなく、俺を相変わらず実験動物にしか見てないんだな。だから俺にトカゲ野郎って言われるんだよ




