第2話:【友達】
案内されたのは、公安の研究施設にある立派な一軒家だった。
アンナは玄関を開けると、「入って入って!」と俺を招き入れた。
一軒家を丸々一人で? 警察の待遇すげぇ、なんて感動していたら。
「裕の部屋はこっち!」
「……え、一部屋だけ?」
アンナが指差したのは、リビングに面した一室だった。
「私はこっちの部屋!」
そして彼女が指差したのは、そのすぐ隣のドアだ。
少女と二人きりの同居生活。
戸惑いながらも、俺は彼女に疑問をぶつけた。
「さっきの、その『超人』って何?」
ソファに腰を下ろすと、アンナも対面に座り込んだ。
「正式にはナノマシン兵。秘密で人体実験してるんだ!内緒ね!」
さらっと怖いことを言うな。
「アンナはどんな能力なの?」
「私は『狙撃特化』だけど、再生能力は裕より弱いのかな」
「改造されたの?」
「うん! ちっちゃい頃にね!」
(今もちっちゃいじゃん)と思ったが飲み込んだ。
両親を亡くし、公安に引き取られてそのまま警官になったという彼女。
そんな過酷な生い立ちを微塵も感じさせないほど、彼女は明るく、そして人懐っこかった。
「アンナって警官っぽくないよな。その、チ……」「チビって言うな!」
身長のことを言われると嫌なのか、食い気味で言われた。
そのまま、とりとめのない話を続けた。
「アンナってハーフ?」
「うん! 日英のハーフ!裕は?」
「俺は、静岡と東京のハーフだよ」
「それ、ハーフって言わないよ!」
アンナがケラケラと笑う。この子、本当に明るいな。
夜も更けてきたので、俺は自室に入ろうとしたが――。
「どうした、アンナ」
「もっと話そー!」
……人懐っこすぎる。
結局、深夜まで付き合うことになった。外では静かに雪が降る。けれど部屋の中は、アンナの笑い声と無尽蔵の元気で満ちていた。
「それでね……」
アンナがうとうとし始めた。
「ほら、そろそろ自分の部屋で寝な」
「そっか……」
アンナが、捨てられた子犬のような顔で立ち上がる。
妙な罪悪感に襲われた。
「……冗談だよ。もう少し話そう」
「ほんと!?」
パッと明るい笑顔が戻る。
このテンション、いつまで耐えられるかな……。
俺が限界を迎えて布団に潜り込んでも、彼女はまだ側にいた。
「ねぇ、裕」
不意に、アンナの声がしおらしくなる。
「……なに? もう寝ようよ」
「私たちって……友達?」
不安そうに覗き込んでくる青い瞳。
「え、ああ。友達だな。話しやすいし」
「……ありがとう。おやすみ、裕。」
そう言って微笑むと、今度こそ彼女は自室に戻っていった。
その日の夜、俺は何故かクマと相撲を取る夢だった。うなされた。




