第27話:【銃声】
俺は残った対ナノマシン弾を、確実に、ひとりひとりの心臓へとぶち込んでいった。
アサルトライフルを掃射してくる奴の胸に一発。
「ひとつ!」
ショットガンを構えた奴の喉元に一発。
「ふたつ!」
背中を見せて逃げ惑う奴の背後に一発。
「みっつ!」
「次、よっつ目!」
カチッ。
弾切れだ。俺はライフルを投げ捨てると、背負っていたショットガンを抜き放ち、もう一人のナノマシン兵の心臓を至近距離でぶち抜いた。
「よっつ!」
「アンナ! ナノマシン兵は全部片付けたよ!」
『裕! こっちにテロリストが……ああっ、すぐ来て!』
「了解!」
無線の焦燥感に、俺の心臓が跳ねた。全速力でアンナのいる狙撃ポイントへと走る。
アンナの元に近づくと、そこではマフィアのボスが、文字通りテロリストを『引き裂いて』いた。
腕が飛び、脚が舞う。人間離れした膂力。マフィアのボス側の戦況は、これで大丈夫そうだ。
だが、肝心のアンナは、生き残っていた一人のライフル持ちに追い詰められていた。
俺は走り込みながら、ショットガンでそいつの頭部を破壊した。頭が半分吹き飛び、一度は倒れ込む敵。だが、奴は首の肉を泡立たせながら、再び起き上がってきた。
(こいつもナノマシン兵か!)
俺がショットガンの次弾を装填しようとした、その一瞬。
敵のライフルが火を吹いた。
――ターーーンッ!
乾いた銃声と共に、アンナの身体が激しく弾かれた。
――倒れる前に一度俺を見た。まるで謝るかのように
「アンナぁぁぁ!!」
俺は雄叫びを上げ、敵にタックルをかまして押し倒した。馬乗りになり、心臓目掛けて零距離から残りの散弾を全弾叩き込む。肉片が飛び散り、今度こそ敵は沈黙した。
「アンナ! アンナ!」
駆け寄ると、アンナの身体は激しく痙攣していた。
防弾ベストを貫通し、腹部を撃ち抜かれている。対ナノマシン弾特有の、再生を阻害する黒い波動が傷口から広がっていた。
「アンナ! 痛いけど、ごめんな……我慢しろよ!」
俺は震える手でナイフを抜き、彼女の銃創に突き立てた。かつて葵が俺にしてくれたように、肉を抉り、中に潜んでいる対ナノマシン弾を無理やり掻き出す。
「……っ、ぁ、あぁあああ!!」
声にならない悲鳴を上げるアンナ。
カラン、と血に染まった弾丸が地面に落ちた。これでいい。これで毒は消えた。俺の時もこれで助かったんだ。これで一安心――。
「……ごふっ!!」
だが、アンナはそのまま大量の鮮血を吐き出した。




