第26話:【捨て身】
スナイパーが俺を狙っているのがわかった。このままじゃ埒が明かない。
(こうなったら)
俺はわざとスナイパーに位置を晒した。
直後、衝撃と共に視界が真っ赤に染まった。俺の頭が、敵のスナイパーに正確に撃ち抜かれた。だがおかげで方向がわかった。
脳が揺れる激痛。俺は倒れながら、銃声のした方向をアンナに叫んだ。
「アンナ! 2時の方向だ!」
『わかった! ……見つけた、仕留めたよ!』
アンナのカウンター・スナイプが決まった。
だが、今の俺の立ち振る舞いで、敵のライフル持ちに俺がナノマシン兵であることが完全にバレた。
ライフル持ちの銃口が、俺に固定される。俺は遮蔽物を捨て、左右に蛇行しながら一気に距離を詰めた。
『裕! 無謀だよ、隠れて!』
アンナの悲鳴のような無線。だが、止まるわけにはいかない。
1発目。躱した。
2発目。外れた。
ライフル持ちが落ち着いて3発目の狙いを定める。だが、俺にはスナイパーに撃たれた時に閃いた確信があった。
――わざと撃たれて、隙を作る。
敵が引き金を引く瞬間、俺は心臓の前に左腕を突き出した。
ターーーンッ!
激しい戦場に、あの嫌な乾いた音が響く。
左腕に激痛が走り、肉が弾け飛んだ。だが、心臓は無事だ。
「――お返しだ!」
俺は至近距離からショットガンを叩き込んだ。
ズドンッ!
ライフル持ちの胴体が消し飛ぶ。俺は休む間もなく、ナイフで左腕に食い込んだ弾丸を無理やり抉り出した。対ナノマシン弾さえなくなれば、再生が始まる。
『バカ! 撃たれながら撃つなんて……もう、二度とやらないで!』
「ライフル持ちさえいなけりゃ、こっちのモンだ!」
気づけば、俺はテロリストたちの陣地のど真ん中にいた。俺は落ちていたライフルを拾い上げ、さらに奥へと走り出す。
「懐まで入った! これから派手に暴れるから、援護頼む!」
『わかった……もう、絶対死なないでよ!』
テロリストたちがアサルトライフルを乱射してくる。
何発も体に被弾し、血が噴き出す。だが、構わず俺も引き金を引き続けた。
銃声と爆音、悲鳴が入り混じる地獄絵図。
そこで俺は、奇妙な光景を目にした。ショットガンで確実に仕留めたはずのテロリストたちが、のろのろと起き上がってきたのだ。
「……チッ、こっちもナノマシン兵か!」
すぐにライフルに持ち替え、心臓を狙って正確に狙い撃つ。対ナノマシン弾を撃ち込まれた敵兵は、激しく痙攣した後に今度こそ動かなくなった。
ナノマシン兵は、残り4人。
俺は血塗れの左手で、次弾を装填した。




