第25話:【戦場】
K区の廃工場。辿り着いたそこは、もはや「事件現場」ではなく「戦場」と化していた。
女リーダー率いるテロリストたちと、中国マフィアが正面から衝突している。最新兵器を手に入れたテロリストの火力は凄まじく、数に勝るはずのマフィアが若干押されていた。
混乱の中、マフィアのボスがこちらへ駆け寄ってくる。
「アンナ、遅かったな。見ての通りだ……。すまんが、うちの連中と共闘してくれんか?」
まさかのマフィアからの要請。背に腹は代えられないといった顔だ。
「アンナ! 渡りに船だ、共闘しよう!」
「うん! じゃあ私は狙撃で援護! 裕は突っ込んで。……なるべく、撃たれないでね!」
「おう!」
短く返し、俺は銃弾が飛び交う激戦区へと身を投じた。
近くにいたマフィアたちが口々に叫ぶ。
「手を貸してくれるのか?」「ありがたい!」「こいつ、死神の仲間だぞ!」
中国語はわからないが、一人がたどたどしい日本語で状況を伝えてくれた。
「ナノマシン兵、何人かイテ、てこずってイマス……!」
「わかった、俺がやる! みんなに『ナノマシン兵は心臓が弱点だ』って伝えろ。あと、動ける奴3人ついてこい!」
指示を飛ばし、激しい銃撃の隙を突いて飛び出す。
(ライフル持ちは5人か。遠いな……)
そう思った瞬間、テロリスト3人の頭が立て続けに弾けた。アンナだ!
『あとは遮蔽物に隠れてて撃てない! 裕、撃たれないようにね!』
無線にアンナの声が飛ぶ。ナイスアンナ!
俺は瓦礫に隠れながら、残るライフル持ちへと距離を詰めた。足元には敵味方の死体が転がっている。
「いいもん持ってんじゃん」
俺は倒されたテロリストの手から転がってたロケットランチャーを拾い上げた。
「ロケラン使う! 援護しろ!」
マフィアたちに声をかけ、一気に立ち上がる。
――ドォォンッ!!
発射された弾頭が轟音と共に着弾し、ライフル持ちを含むテロリスト4人を爆風が飲み込んだ。これでライフル持ちはあと一人。
「よし、お前ら3人はここで待機……」
そう言いかけた時、今度は敵側からのロケットランチャーが俺たちを襲った。
凄まじい爆発。俺の体は無残に吹き飛ばされる。
ひどい耳鳴りと痛み。体がバラバラになりそうな感覚。ナノマシンは即座に修復するが、いきなり大ダメージだ。意識が飛ぶところだった。頭がくらくらする。
……ついてきた3人は!?
視界を上げると、2人は既に文字通りバラバラになっていた。残る1人は軽傷のようだ。
「立てるか! 早くここを離れろ!」
「ハイ……!」
男の手を引き、駆け出した直後。先ほどまでいた場所が再び爆発に包まれた。
一箇所に留まらなくて正解だった。そう安堵した瞬間、隣を走っていた最後の1人の頭が、スイカのように弾け飛んだ。
狙撃だ。
「アンナ! 敵にスナイパーがいる!」
『うん、わかってる! 今探してる……っ! 裕、どこかに隠れてて!』
遮蔽物のない廃工場の広場で、俺は透明な死神の照準に晒されていた。
(アンナ…信じてるぞ)




