第20話:【中国最強の男】
K市の捜査が難航しているとのことで、翌日、徒手の訓練を受けた。
「どりゃあ!!」
俺はアキラに渾身のバックドロップを叩き込んだ。
「ぐはっ!」
『なかなか調子いいね。次は葵くんとだ』
モニター越しに高槻の無線が飛ぶ。
◇
「いてててて……」
葵に腕を絡め取られ、ギブアップ。
ギリギリで負けてしまった。葵、体術強すぎ。
「昨日と全然違うじゃない。見直したわ」
「えへへ、まあね」
自分でもわかる。アンナの笑顔を見て、安心したからな。
『惜しかったね、もう少しで勝てそうだったよ』
高槻も珍しく褒めてくれた。どーだ!見たか、爬虫類!
◇
後日、高槻は俺たち3人を呼び出した。
「捜査官からK市にリーダーの隠れ家を見つけたと報告があった」
「いよいよですね」
アキラは静かに覚悟を決めていた。
「リーダーは確保でいいんですか?」
「ああ。ただし、ナノマシン兵だった場合は……すぐに破壊してくれ」
――破壊。やっぱり高槻は俺たちを人として見られていない。このトカゲ野郎が!
◇
K市。
リーダーの隠れ家は東京にしてはデカい一軒家だった。
「裕、葵は突入! 俺は狙撃で援護する!」
「了解」
俺と葵は短く返し、即座に動いた。
「あなたはいつも、どうやって突入してるの?」
「いつもピンポン押して正面突破だよ」
「対ナノマシン弾があるんだから、正面突破するなら一人でやりなさい。私は裏に回るわ」
相変わらず冷たい。まあ、仕方ないか。
◇
俺は玄関の呼鈴を鳴らした。
『ダレですか?』
インターホン越しに片言の日本語が聞こえる。
「あ、配達でーす。サインお願いしまーす」
適当な嘘を吐き、扉の影に身を隠す。
案の定、直後に散弾が扉を貫いた。
出てくる気配はない。
俺はドアを力任せに破壊して中に踏み込む。
入った瞬間、そこにいたのは巨大な影。
大柄な男が散弾銃を構えている。でかっ――
――ズドンッ!
腹に被弾した。衝撃で扉の外まで吹き飛ぶ。
(いてぇ! マフィアのボス並みの巨漢。いや、2メートルは超えてるか?)
俺は死んだふりをして隙を伺う。
大男は俺の胸ぐらを掴み、頭を吹き飛ばそうとする。
「もらった!」
腕ひしぎを仕掛けた――が、大男は異常だった。
関節を極められているはずの腕を使い、俺ごと振り回して壁に叩きつける。
「がはっ!」
肺の空気が全部漏れた。
中国語で何かを呟きながら迫る。
俺はショットガンを至近距離で発射した。
だが、大男はそれを予知したかのようにひらりと躱す。
そのまま体当たりをぶち込んできた。中国拳法・八極拳の構えだ――格ゲー知識だが。
「ごほっ!」
内臓がズタズタになったのか、壁にめり込みながら血を吐いた。
こいつ、本当に人間か? 再生が追いつかない。
(やられる!)
死を覚悟した瞬間、大男が後ろへ跳んだ。
――ターーーンッ!
アキラの狙撃音が響く。
男は回避を終え、そのまま塀を飛び越え、闇に消えた。
『今のは……あの身のこなし、体格……王だ!』
アキラの声に動揺が混じる。
「ワン? 誰? 殺されるかと思った……」
『中国最強の殺し屋だ。葵も心配だ。王は逃がしていい。恐らく今の俺たちでは勝てない』
葵からも無線が入る。
『――こっちも逃げられたわ! リーダーに目をやられた!』
『何!? 怪我をしたのか?』
『催涙スプレーよ……っ』
あの葵が手玉に取られた。
リーダーも相当な曲者。
そして、中国最強の男――王。とんでもない化け物が現れた。




