第1話:【金髪碧眼】
第1話:【金髪碧眼】
銀行強盗の凶弾に倒れ、俺は生死を彷徨っていた。
痛い。焼けるようだ。……なのに、凍りつきそうなほど、……寒い。
断片的に、男の声が聞こえてくる。
「検査……適合者だ……」
「寒い……毛布を……」
震えながら絞り出した声。
だが、返ってきたのは温もりではなく、どこか冷徹な男の声だった。
「そんなものは、必要なくなりますよ」
優しげだが、どこか無機質な響き。
それを最後に、俺の意識はぷつりと途絶えた。
次に目を覚ますと、そこは病院というにはあまりに無機質な部屋だった。
「ここは……?」
視界に飛び込んできたのは、金髪碧眼の美少女。
吸い込まれるような青い瞳が、至近距離で俺を覗き込んでいた。
「あー、キャンユー・スピーク・ジャパニーズ?」
俺の精一杯のカタカナ英語。日本語しかわからない。
「イエス!気がついたね!私、アンナ! 何本に見える?」
少女が目の前で指を三本立てる。
「……三本」
「よし、脳までイカれてないね!合格!」
彼女の話をまとめると、ここは公安の秘密研究所だという。
銀行強盗に撃たれて心肺停止になった俺を救うため、「特殊な手術」を施したらしい。
「裕って勇気あるよね。あんな状況で強盗に立ち向かうなんて」
(呼び捨てかい……)
「……自警団をやってたから。モテようと思って」
「バカだね!」めっちゃ明るい声で言われた
「私は警官だよ!」
屈託のない笑顔でアンナは言った。
(警官?こんな「ちんちくりん」が?)
困惑する俺の前に、一人の白衣の男が現れた。
「気がついたかね。裕くん」
「あ!高槻!今目覚めたの!」
高槻と呼ばれた男が、俺の体調を尋ねてくる。
不思議なことに、どこも痛くない。撃たれた箇所を触っても、傷跡すら残っていなかった。
「致命傷だった君を救うために、ある特殊な手術をした」
高槻は淡々と続けた。
「体を治すナノマシンを生成する『核』を心臓に移植したんだ。適合したのはラッキーだったよ」
「ナノマシン……?」
「どんな傷でも治る超人になったと言えばわかるかな?」
「ウルヴァリンみたいな?」
「そうそう! 爪は出ないけどね!」
アンナが茶目っ気たっぷりに笑う。
だが、俺の不安は別のところにあった。
「そんな手術されても、俺に金はないですよ。分割でいくらです?」
「あー、払わなくていい。ただ、慈善事業じゃない。警察の特殊部隊に入隊してもらうよ」
拒否権はないに等しかった。
俺は公式には「死人」扱い。会社にも死亡届が届いているという。
断れば一生、ここで実験動物として軟禁生活だ。
「……わかりました。入隊します」
やり甲斐のない前の仕事に戻るよりはマシか。そんな軽い気持ちで頷いた。
「よし。では、今日から寮生活だ。部屋に慣れるまで一週間の休暇をあげよう。アンナくん、案内してやってくれ」
「はーい! 裕、こっちだよ!」
アンナに腕を引っ張られ、俺は真っ白な病室を後にした時、
高槻は意味ありげな笑みを浮かべた。
(親友には、会えるのかな?)




