第17話:【処罰】
帰りの輸送車の中。
車内には、鉛でも詰め込まれたかのような重苦しい沈黙が流れていた。
アンナは大型ライフルを抱えたまま、膝に視線を落として俯いている。その肩は心なしか小さく震えているように見えた。
この空気、ぶっちゃけ耐えられない。
「え、えーと……葵。弾取ってくれてありがとな! めっちゃ痛かったけどさ、マジで助かったよ」
「ええ」
……そっけない。
「あ、アキラもさ! あそこで的確な指示飛ばしてくれてなかったら、俺、今頃あの世だったよ!」
「ああ」
……さらにそっけない。
最後に、一番声をかけたかった相棒に向き直る。
「アンナ! 駆けつけてくれてありがとうな! おかげで助かったっていうか……その、正直嬉しかったよ!」
「…………。」
無言。アンナは顔を上げることすらしない。
「あ、あははは……は……」
俺の乾いた笑いだけが、静かなに車内に響いて消えた。
「アンナくん」
突然、高槻博士が静かに声をかけた。
「……っ、はい」
アンナの身体がビクッと跳ねる。
「君は命令違反で持ち場を離れた」
「……はい」
アンナが膝の上の拳を、白くなるほどギュッと握りしめる。
「狙撃班が持ち場を離れると言う事の重大さは君がよく知ってるね?おかげでリーダーはアンナくんの持ち場の方から逃げた。」
「……っ……はい……」
追い打ちをかけるような博士の言葉。
おいおい、持ち場離れたぐらいでそんなに責めなくてもいいだろ。
俺は隣に座る葵に、こっそり耳打ちした。
(……ねぇ、命令違反ってどうなるの? 銃殺とか、そんな物騒なことにならないよね?)
「今は銃殺なんてことはないわよ。まあ、軍だったら懲戒か禁錮刑ね。」
と、淡々と表情を変えずに言った。
(おい! 小声で聞いたのに、なんでこいつは普通トーンで答えるんだよ!小声で言えよ!ふざけるな!)
案の定、アンナはまたビクッとして、震えが止まらなくなっている。
「私は、処罰の権利も与えられている」
「…………はい」
アンナの目から、ポタポタと大粒の涙が床に落ちる。
「7日間、自室謹慎だ」
アンナの目が点になる。涙で濡れた頬に、一瞬希望が差し込むような光が反射した。
「だけ……ですか?」とアンナが敬語で問い直す。
博士は眉ひとつ動かさず、淡々と付け加える。
「…以上。どうだね? アキラくん」
アキラは驚いた顔をして一度、葵と見つめ合ってから
「……まあ、高槻博士がそう仰るのなら」
と、これ以上追求しない様子。
「え? え? 自室?それって重いの? 軽いの?」
引きこもるだけ?俺なら喜ぶけど?
俺の困惑をよそに、輸送車は街を静かに走り続けていた。




