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第15話:【処置】


「ごほっ! おぇっ……!」

 せり上がってきたものを地面にぶちまける。床に広がった自分の血が、妙に鮮やかに見えた。


 胸の中に、物凄い異物感。そいつが内側から俺の神経を焼き切っているのかと言うぐらい、痛い。熱い。手足が自分の意志を無視してガタガタと痙攣を始めた。


「裕が撃たれたわ!」

 葵の悲鳴のような叫びが、鼓膜を震わせる。

『対ナノマシン弾か!?』

 無線越しに聞こえるアキラの声にも、いつもの冷静さはない。


「おそらく! 痙攣して血が止まらないわ!」

 葵が必死に状況を伝えている。その声が、どんどん遠くなっていく。


『どこを撃たれた!』

「胸よ! 心臓ではないと思うけど……」


『ナイフで弾を抉り出せ! 早く! !』

 アキラの怒号に近い指示。ただでさえ痛いのに……ナイフ?


 葵が俺の顔を覗き込む。その瞳には焦りが滲んでいた。

「裕……ごめん!」

 彼女がそう言った直後、俺の胸に冷たい刃先が突き立てられた。


「ぅう、ぐぅっ……!」

 意識を強引に引き戻されるほどの激痛。俺は咄嗟に近くにあった布を口に押し込み、歯が砕けるほど噛み締めた。

「頑張って!」

 傷口に、葵の指が深く潜り込んでくる。


 肉を裂き、傷口を掻き回される痛み。


 ナノマシンの再生がなくなったせいで、神経の全てが刺激を増幅して脳みそまで響く。

「うぅーー!!」

 喉の奥から獣のような呻きが漏れた。

「しっかりしなさい!」

 葵の指が容赦なく傷の奥をぐりぐりと抉る。想像できる?刺し傷に指ぐりぐり入れてるんだぜ?痛いなんてもんじゃない。



 その頃アンナは無線を聞いて持ち場を離れて走っていた。


「裕!」躓き、転んでも必死に走った。

『アンナ!持ち場を離れるな!』アキラが止める


「だって!裕が!」悲鳴のようなアンナの声が無線から聞こえた

「裕! しっかりして!」


 遠のいていく意識の中で、アンナの悲痛な声、泣いてんのかな


「しっかりしなさい! 弾を見つけたわ!」

 水の中みたいにボヤけた葵のその言葉を最後に、俺の意識は真っ暗な闇へと沈んでいった。

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