第15話:【処置】
「ごほっ! おぇっ……!」
せり上がってきたものを地面にぶちまける。床に広がった自分の血が、妙に鮮やかに見えた。
胸の中に、物凄い異物感。そいつが内側から俺の神経を焼き切っているのかと言うぐらい、痛い。熱い。手足が自分の意志を無視してガタガタと痙攣を始めた。
「裕が撃たれたわ!」
葵の悲鳴のような叫びが、鼓膜を震わせる。
『対ナノマシン弾か!?』
無線越しに聞こえるアキラの声にも、いつもの冷静さはない。
「おそらく! 痙攣して血が止まらないわ!」
葵が必死に状況を伝えている。その声が、どんどん遠くなっていく。
『どこを撃たれた!』
「胸よ! 心臓ではないと思うけど……」
『ナイフで弾を抉り出せ! 早く! !』
アキラの怒号に近い指示。ただでさえ痛いのに……ナイフ?
葵が俺の顔を覗き込む。その瞳には焦りが滲んでいた。
「裕……ごめん!」
彼女がそう言った直後、俺の胸に冷たい刃先が突き立てられた。
「ぅう、ぐぅっ……!」
意識を強引に引き戻されるほどの激痛。俺は咄嗟に近くにあった布を口に押し込み、歯が砕けるほど噛み締めた。
「頑張って!」
傷口に、葵の指が深く潜り込んでくる。
肉を裂き、傷口を掻き回される痛み。
ナノマシンの再生がなくなったせいで、神経の全てが刺激を増幅して脳みそまで響く。
「うぅーー!!」
喉の奥から獣のような呻きが漏れた。
「しっかりしなさい!」
葵の指が容赦なく傷の奥をぐりぐりと抉る。想像できる?刺し傷に指ぐりぐり入れてるんだぜ?痛いなんてもんじゃない。
◇
その頃アンナは無線を聞いて持ち場を離れて走っていた。
「裕!」躓き、転んでも必死に走った。
『アンナ!持ち場を離れるな!』アキラが止める
「だって!裕が!」悲鳴のようなアンナの声が無線から聞こえた
「裕! しっかりして!」
遠のいていく意識の中で、アンナの悲痛な声、泣いてんのかな
「しっかりしなさい! 弾を見つけたわ!」
水の中みたいにボヤけた葵のその言葉を最後に、俺の意識は真っ暗な闇へと沈んでいった。




