第11話:【ライフル持ち】
K市に向かう前に高槻へ現状を報告した。
『そうか。そちらには本部の捜査班を送ろう。二人は一度、戻ってきてくれないか』
K市は隣の市なのに…と思ったが高槻はちょっと焦ってる声だった。
◇
「戻ったね。密造された武器の使用が確認されたよ。恐れていた通り、あれは『対ナノマシン弾』だった」
高槻がモニターに映し出したのは、歪な形状をした弾丸の設計図だった。見ても分からないけど
「対ナノマシン弾? 何ですか、それ」
「軍用の特殊弾だ。着弾後、体内に残るように設計されている。そこからナノマシンの活動を阻害し、再生を停止させる特殊な毒を撒き散らすのだよ」
「再生しなくなるってこと?」
「ああ。それだけじゃない。猛毒だ。すぐに弾を取り除かなければ、裕くん、君でも数分で命を落とすだろうね」
高槻は淡々と、恐ろしい事実を突きつける。
「心臓は特に気をつけたまえ。そこにナノマシンの『核』があるからね。撃たれれば即死だ」
「俺たちを殺すための武器が、もう出回ってるんすね」
日本軍――自衛隊とは別に存在する、やたら黒い噂のある組織だ。自衛隊が白なら日本軍は黒ってイメージ
「女リーダーの仲間の潜伏先が判明した。T区の雑居ビルだ。必ず生かして確保してくれたまえ」
「……そんな危険な弾があるのに、俺たちが行くんですか?」
「当たり前だよ。普通の人間ならまず助からないからね」
ナノマシンが解毒するから俺らがうってつけなのか
◇
T区。
「T区って、おいしいものあるの?」
「ああ、お好み焼きの名店があるよ」
最後になるかもしれないしな……
俺たちは突入前にお好み焼き屋へ寄った。
「裕、そのケース、重そうだね」
「ショットガンだよ。アンナのは?」
「狙撃銃!……ねぇ、裕」
店を出る際、アンナが真面目な顔で俺の服の裾を掴んだ。
「どうした?」
「……撃たれないでね。」
フラグを立てるな
◇
雑居ビル。
アンナを隣のビルに配置し、俺は建物の入り口に立った。
「ウーバーでーす!!」
勢いよく扉を蹴破る。
――ガガガガガッ!
即座に浴びせられる銃弾。俺は慌てて壁の陰に隠れた。
『……なんで正面突破したの。バカなの?』
無線からアンナの呆れた声が届く。
「うるさい、こっからだ!」
俺はフラッシュバンを二個、室内に転がした。一個だと怖いから
――バァンッ!
炸裂音を確認し、突入。怯んだテロリスト六人の足をショットガンで次々と撃ち抜く。
(ライフル持ちはいないか。……よし!)
『裕! 後ろ!!』
アンナの悲鳴に近い警告。咄嗟にしゃがみ込む。
――タァーンッ!
頭上を抜ける銃声。奥に、ライフルを構えた男がいた。
「ちょこまかと……!(中国語)」
男が次弾を装填する。俺は必死に飛び退いた。
(あれが対ナノマシン弾か……!)
リロードの隙を突き、俺は近くの椅子を男に投げつけた。ライフルが男の手から離れ、床を転がる。
だが、男は怯まなかった。見事な中国拳法で俺のショットガンを叩き落とす。
互いに素手。睨み合う。拳銃を抜く隙さえ与えてくれない。
男が動いた。鋭い飛び蹴りが俺の顔面に突き刺さる。
鼻の骨が砕ける音がしたが、俺は構わず男を抱え上げ、床に叩きつけた。【ライガーボム】昔のプロレスラーの必殺技だ。
決まった――と思った瞬間。
男は床を転がりながら、いつの間にか奪っていた俺の拳銃を引き抜いた。
(あ、俺の銃)と思ったら
――パァンッ!
「いッッッ!!」
弾丸は俺の左脚を貫いた。
それとほぼ同時に、
ドンッ!!
ビルの窓を突き破って隣のビルからアンナの弾丸が男の脚を貫いた。
男が怯んだ一瞬を逃さず、俺は背後からその首を腕で締め上げた。裸絞め。
(お、落ちろ〜!)
必死に絞めた。
数秒後、男の体が力なく崩れ落ちる。
「はぁ、はぁ……か、確保。……ナイス、アンナ」




