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彼は、幼い悲鳴と同時に地面に飛び降りた。
その発生源は、彼が抱えた少女のものだった。なんだか懐かしい悲鳴。
抱えられた状態から、地面に降り立ったのはフリルのあしらわれたドレスを着た少女。彼女はフウロだ。サマリーを採る際に協力してもらって以来だ。
身長は烏色の胸ほどまでで、潤んだ目で僕を見上げると。
「ごめんなさい!」
と勢いよく頭を下げた。
「えっ? え?」
僕は突然の謝罪にどうしていいか分からず、その場で手を右往左往させる。
「えっと、僕なんかされた?」
「覚えてないですか? 私の町の冒険者が、ひどいことをして」
「あぁ~」
冒険者の人に絡まれたのは、彼女のせいじゃないし、止めようとしてくれていたのは分かっていた。
「むしろ、こっちこそ色々と騒ぎになっちゃってごめんね? あの後、大丈夫だった?」
「はい。こっちは大丈夫でした」
まだ彼女は申し訳なさそうに顔を俯かせていた。
「大丈夫だから、そんな悲しそうにしないでよ。というか、なんで烏色さんと一緒なの? というか、その鳥どうしたの?」
「えっと」
彼女は困ったように、烏色を見る。
「あぁ、これはあの後、それはもう苦労して服従させてね。ここに戻る途中彼女はその手紙を持ってたのを見つけて、せっかくだから連れて来たんだ」
彼は怪鳥を撫でながら言う。撫でられて目を細め首を差し出すその姿からは、最初のころにあった禍々しさはなくなっていた。
一体どうやってここまで手なずけたのだろうか。
「手紙って言うと」
「招待状、タイヨウがくれたんじゃないの?」
そういって、彼女はポケットから一通の手紙を取り出した。それは確かに僕が書いたものだった。
フウロにまで届いているとは、セロは一体どうやって彼女に届けたのだろう。もしかして、書いた人全員届いているのか?
「確かに、僕が書いたやつだ。えっと、ただまだ会場の設営が終わってなくて、どうしよっか」
「そうだよね! まだまだ日付あるし、どうしよっかなぁ……」
「そしたら、とりあえず、上行ってみる?」
「うん」
「それなら、私が連れて行きましょう」
「え?」
烏色は、嬉々としてそう言うと、僕とフウロを両脇に抱えて怪鳥に飛び乗った。
「それじゃあ、行きますよ!」
僕らの返事も聞かずに、怪鳥を飛ばせる烏色に、あぁこうやってフウロも連れていかれたんだなぁと思いながら、僕は全身に当たる風を受けながら悲鳴を上げた。




