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「おう、サルビアはどうした?」
僕が小屋から出たのに最初に気が付いたのは、クラトスだった。
ちょうど資材を運んでいたのか、その大きな腕に持ったベニヤ板をそこに置き、僕の頭を撫でる。
力強いが、優しくて少しオイルの匂いがした。
「中で目をキラキラさせてるよ。僕はちょっと外の空気でも吸おうかなって」
「そうか。あんま遠く行くなよ」
「待って!」
そう言って、また作業に戻ろうとするクラトスを呼び止めた。
「どうした?」
「ちょっと乗せて欲しいなぁって」
僕は言って、迷惑だったかなと思い、声が小さくなっていく。
「おう! 乗ってけ乗ってけ! あんま暴れんなよ?」
僕の不安を知ってか知らずか、クラトスは豪快にそう言って、扉を開いた。
クラトスに乗って向かったのは、まだ建設中の屋台だ。周囲はちらほらともう完成しているものもあり、射的や、金魚すくいなどの看板も取り付けられていた。
「ここは何を造ってるの?」
「焼きそば屋だってよ」
「焼きそば! 食べたことないや」
リュックを下ろしてから、今の身体はもう、食事をする必要もないが、それでもお腹がすきそうな響きだ。
「当日は俺が店番するからな! 楽しみにしとけよ」
腕を振り上げるクラトス。その大きな腕で一体どうやって焼きそばを作るのか、僕には一切分からなかったが、きっと何かしらやりようはあるのだろう。当日が楽しみだ。
「そうだ。タイヨウも組み立て手伝ってくれねぇか?」
「良いの?」
「おう!」
それから僕は焼きそばの屋台が完成するまでそこでクラトスを手伝った。
途中、板材が足りなくなったので、僕は資材を加工しているところまで板材を取りに向かった。
「すみませーん」
「ん? あぁ君は」
そこに居たのはヘッダだった。巨大なローラーで、丸太を削り、板材へと変えていた。
「板材をもらいにきました」
「あぁそしたらそこから持ってって~」
間延びのした、独特な感覚の声。マイペースなゆったりとした声は、聞いているこっちも気が抜けてしまう。
「これですね?」
僕は積まれた木の板材を持ち上げる。大体僕と同じくらいの板材が十枚くらいを持ち上げて、肩に背負う。
「そうそれ~気を付けてね」
ゆったりした声の背後では、丸太がバリバリと音を立てて削れていて、初めて会った時、あれに襲われていたことを思い出す。もし、セロが居なければと、考えるとぞっとする。




