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行きの騒々しさが嘘のように悠々とした道中だった。まるでここまでの頑張りを労うように、車の中はゆっくりとした時間が流れていて、僕は久しぶりにゆっくりとした眠りについた。
「着きましたよ」
車のブレーキで目が覚める。数日車に揺さぶられる旅ももう終わり、僕は久しぶりの蜘蛛を見上げながら、軋む身体を伸ばした。
僕らは蜘蛛の脚を上って、あの小さな四角い小屋に入る。
「祭りの準備はどうする?」
「私にお任せください。久しぶりの準備、腕が鳴りますね」
セロは足取り軽やかに、部屋の奥へと向かっていった。
蜘蛛に着いて早々に暇になってしまった僕は、祭りにある人を招待しに向かうことにした。
蜘蛛から降りて海岸に沿って歩いた先。波の寄せる砂浜に僕は向かった。
「セウストさーん」
僕が意識を持ってから、初めて会った彼。花火と祭りと聞いて、実は前々から戻ったら誘おうと考えていたのだ。
砂浜に来たのも久しぶりで、僕は声を上げながら砂浜を練り歩いていく。
「セウストさーん! どこですかー?」
僕が声を上げて歩くも、セウストさんからの返事はない。しかし、彼の身体の都合上、この砂浜の何処かにはいるはずなのだが……。
それからしばらく探して周ったが、結局セウストは見つからなかった。たしかにこの砂浜で会ったはずなのだけど、僕の記憶が混濁しているのか、別の砂浜を勘違いしているのか、分からない。
夕陽を全身に浴びながら蜘蛛に戻ると、四つん這いの犬のような見た目をしたロボットや、羽の生えた蝙蝠のようなロボットが、そこら中で木材や鉄パイプを運び、小さな屋台を建てていた。
中心では、地図を持ったセロが立っていて、周りのロボットに指示を飛ばしていた。
「セロさん? このロボットたちは?」
「ここに残された作業用の子達です。意思がないタイプですので、無休で働き続けますよ」
セロの言う通り、ロボットたちはひたすら動き続け、それに文句を言う素振りもない。その眼を見てみても、ガラスが反射しているのみで、意思は感じられなかった。
「それと、もう招待の手紙を書いといて欲しいのですが」
セロは一羽の蝙蝠を呼び、何枚かの手紙を受け取る。
「もう?」
「人によっては遠いでしょうし、予定もありますから」
「なるほどね」
僕はセロからその手紙を受け取ると、思い出せるだけの人への招待を書いた。人によっては、そもそも所在が分からない人や、手紙が届くのかも怪しかったが、そこはセロに任せることにした。




