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「ただ、我々も準備があるからの、あまりすぐには行けないと思うんじゃが」
「あ、えっと」
そういえば、いつやるのかなんて、決めていない。そもそもあの蜘蛛まで行くのだって、一筋縄では行かないのではないだろうか。
「詳細は後日、招待状を送りますね」
思い付きで口を出した僕をフォローしてくれたのはセロだった。
僕の横にすっと立つと、あれよあれよと話を進めてしまった。蜘蛛までの足も、招待状の手配も大丈夫なのだろうか?
セロの横顔は相変わらずの無表情で、何を考えているのか分からない。
「では、戻りましょうか、蜘蛛に」
ひと通り話を終えたセロが、僕の方へ向くと、その手を差し出す。無表情だったはずの顔は優しく微笑んでおり、人との区別は付かない。
「うん」
僕は彼女のひんやりとした手を取る。ヘローのガレージから車を出すと、セロが運転席に座った。僕も運転出来るのだが、「長距離になりますので」と言って運転席に座ってしまった。
時折り揺れる車の中、移ろい少しづつ少なくなる家を眺めながら僕は物思いに耽る。
ここまで長かった。ここまでかかったほとんどは、ぬえの妨害によるものだったが、色々な場所を旅したものだ。
僕の過去について、前は悩んでいたが、今は少し変わった。僕は僕。もうそれを引きずることはしない。
いろいろな人に助けてもらって、ここまで来れた。祭りには、今日のヘローたち以外の人も呼ぶことをセロには許可をもらった。これが少しでもみんなへの恩返しになれば幸いなのだけれど。
ヘロー達のいた町から離れ、時折誰もいないガソリンスタンドで給油をする。その道中は、これまでの道筋とは似ているようで少し違うように感じた。
「あぁ、あとは帰るだけですからね。最短距離を進んでるんですよ」
僕の疑問に、給油をしながらセロは答えた。
「そうなんだ。そういえばセロにはガソリンはいらないの?」
セロがなにで動いているのか知らないが、僕はセロが何かを補給してるのを見たことがない。
「私は特に必要ないんですよ」
「へぇ」
どうりで何かを食べたり補給してる様子が無いわけだ。でも、なんの動力もなしに動くアンドロイドなどあるのだな。それか、気にする必要もないくらい高燃費なのだろうか。
給油を終えたセロは、また運転席に戻ってしまった。セロの性格上、聞いても答えてはくれなそうだ。




