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目が覚めるとすでに空の旅は終了していて、僕は若干損したかなぁなんて思いながら、飛行機から降りた。
降りた先は飛行場で、工場の作業員が笑顔で出迎えてくれた。
「どうでした?」
「改良の余地は――」
降りてすぐ、ウィンはほかの作業員と情報の交換を真面目な顔で始めた。
「早速二号機を作りましょう!」
「今度は普通の部品だけで組めませんかね!」
「悪い、爺さんあとは頼んだ」
作業員に手を引かれ連れていかれるウィン。作業員の情熱は、ここまで熱気が見えるほどに熱く、きっといつか、あの空島が神秘のものではなく、普通の場所になるのもそう遠くないのかもしれない。
「すまんな。ああなっては止まらんのじゃ」
「気にするな。用は済んだからな」
「それは良かった」
ヘローは僕の顔を見ると、くしゃりと笑って頭を撫でた。ごつごつとしていて、細いのにその撫でる力は強くて、優しかった。
「大きくなったなぁ」
そう呟くヘローに、僕は無性に泣きたいような安心感に包まれた。
「それじゃ、もう帰っちゃうの? せっかくお料理作ったのに」
「えぇ。時間もないからね」
ヘローの運転でヘローの家まで戻った僕たち。家では天使の奥さんが、出迎えてくれていた。
「そう、せっかくのお客さんなのに、なにもしてあげられなくてごめんなさいね」
寂しそうにする天使の奥さん。
「こっちこそ、頼って悪かった」
「あ、そうだ。セロさん」
僕はそれに思いついたことを聞くことにした。
「え、招待ですか?」
「うん。花火にここの人たちを招待するの。ダメかな?」
「……いえ。それは良いアイデアですね。なんならこれまでお世話になった方、全員お呼びしましょうか」
「良いの?」
「はい」
「あの――」
僕とセロの会話を不思議そうに聞いていたヘローとその奥さんに僕は向き合う。
人を何かに誘うのは初めてだった。辿々しく何度も言葉が詰まってしまったが、二人は静かに僕が話し終えるまで真剣に聞いてくれていた。
「――えっと、その……来てくれますか?」
自分で言い出したことだし、来てくれたら嬉しいのは事実だ。
けど断られると絶対ショックだし、聞かなければ良かった。なんて、返事を聞く前から思い始めていた。
「そうねぇ……」
彼女は横に立つヘローをチラリと見やる。
「そうじゃな。折角のお誘い、お受けしましょう! それに、花火など久しく見ていませんからね」
「ありがとうございます!」
僕は腰を九十度に曲げて勢いよく礼をした。やはり勇気は出してみるものだ。僕の頭の中は誘って良かったという気持ちと、嬉しさでいっぱいだった。なんとも都合の良い脳みそだ。




