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「何が」
「セロ、二階に急げ! おい、サキュエルたちが向かった部屋は」
「こちらです」
私たちは、眼鏡のメイドを先頭に、三階へと向かった。
階段を上り、廊下を進むと、一部屋だけ、明らかにおかしい部屋があった。
廊下の突き当り、扉が吹き飛び床に落ちており、部屋からは黒い煤が噴き出ていた。
部屋の中はまるで大爆発でも起こったかのようで、家具や壁紙が燃え、黒い炭と化していた。
窓ガラスが割れ、気振りのほとんどはそちらに流れていた。部屋に入った三人のうち、二人はその場にいた。
サキュエルとタイヨウだ。部屋の隅でうずくまる様にしていた。
サキュエルは、翼がすこし黒ずんでいるが、ほとんど無傷だ。そして、その腕の中にタイヨウがいた。タイヨウはその衝撃からか、気を失っているようだ。
「お二人とも大丈夫ですか?」
「えぇ」
「一体、何があった?」
タイヨウ様の身体を見ながらツキ様が聞く。
「あの男の記憶を戻したのよ、そしたらあの男、懐から薬品を取り出して、爆発させたの。とっさにタイヨウくんを抱いて羽で防いだから大丈夫だったけど、危なかったね」
羽を叩き、ふぅとため息を吐いた。
「申し訳ございません。私がこの屋敷に入ることを許したばかりに」
「いいの、元々来るもの拒まずなんだから。でも、あの男はちょっとお仕置きした方がいいかもだけど」
「それで、あの男は」
「あの窓から逃げてったの、多分町に向かったと思う。ねぇ、お願いなんだけど、あの男を捕まえるの手伝ってくれない?」
「それより、タイヨウの記憶はどうなった」
「それが……あの男に装置を盗まれちゃった」
「……分かった。サキュエルと、セロは私と来い。タイヨウはそこのメイドに任せていいか?」
てへっと自身の頭を拳で小突くサキュエルに、ツキ様は半ば呆れたように言った。
「もちろんよ。久しぶりに腕が鳴るわ」
「お任せ下さい。きっと捕まえて見せます」
私たちは、タイヨウを預けて屋敷を出た。庭に何か起きた様子はない。
「みなさん、大丈夫ですか~? なにかすごい音が聞こえましたけど」
「男が出てくるのは見なかった?」
「サキュエル様!? 男ですか? 私は見てないです!」
私たちだけだと 思ったのか、爪をいじりながら出て来たメイドだったが、サキュエルを見て慌てて姿勢を正した。彼女でも、自分の雇い主には真面目らしい。
「そう、なら一体どこに」
そのとき、町のほうから爆発音が聞こえた。




