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光から出来た細長い槍、穂先から柄まで全て銀で出来ており、日光を浴びて淡く輝いていた。
槍はメイドの頭よりも少し高い場所にある穂先が風切り音を鳴らしてこちらを向く。
「実力行使で行きますからね!」
一度引かれた槍が突き出された。風を切りツキ様の顔に向けて放たれた槍は、当たる直前、上に弾かれた。
「きゃっ」
「何をしているのですか」
槍を弾いたのは、木の棒の穂先に枝が無数に付いた箒だ。
何処からか現れたのか、黒い縁の眼鏡をかけ、黒髪を後ろでお団子にした天使の女性だ。
服は槍を持ったメイドに比べてフリルのない、シックなメイド服だ。
背筋をしんと伸ばしたまま、槍を持ったメイドの頭を箒で叩く。
「いったーい! 何するんですかメイド長!」
「何もないでしょう。お客様に武器を向けるんじゃありません!」
「だって!」
「だっても何もないです大体あなたは――」
「……すみませんでした」
ひとしきり怒られたメイドは、半べそかきながら私たちに頭を下げた。既に手に持たれていた槍は光となって消えていた。
「私からも申し訳ございません」
その後ろで、メイド長と呼ばれた眼鏡のメイドが頭を下げた。スカートの裾を持ったふわりとした礼は、不貞腐れた前のメイドとは違い、とても綺麗で様になっていた。
「よい。それより案内してくれ」
「はい、只今」
メイド長を先頭に庭を進む。ガゼボの横を抜けた先に屋敷はあった。
見上げるほどの大きさの三階建ての屋敷、横幅は人が手を組んで数十人並んでも届かないくらいに長い。白塗りの壁に赤の屋根が特徴的だ。
見上げるほどではないが、十分に大きい玄関を抜けると、何人ものメイドが忙しなく動いていた。
玄関から正面に見える階段を上る。階段は全員が横に並べるほど広く、二階は吹き抜けになっており、玄関が覗ける。
「こちらでお待ちください」
通されたのは二階にある応接室のような部屋。高級そうな木目調の机と、それに向き合うように置かれた黒い革製のソファが特徴的だ。
しばらくして、また別のメイドがお茶を持ってきた。
花の柄が描かれた白い陶器のティーカップが人数分。中には紅茶が入っていた。
毒物の入った気配はない。純粋なもてなしと見て良いだろう。
「飲んで大丈夫だと思いますよ」
私は率先して口をつける。機械の身体は毒物が効かない。こういうとき、自身のからだはつくづく便利だなと思う。




