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異世界見浪記  作者: 天空 浮世
影法師の後ろでヒョーと鳴く

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08

「神道では、昔から白蛇は幸運の象徴として扱われているのです。良ければこちらの最上階にお住まいになっていただきたいのです」


「……本気?」


 ツキの一切の抑揚のない声。


「もちろんそれが最善ですが、難しければ脱皮後の皮などでも、よろしいです」


 烏色は気にした様子はない。


「私は脱皮しない種族なの。諦めて」


「そうですか……残念です」


 目は伏せているが、その口元は笑みを浮かべたままだ。


「すみません。こんなことお伺いしてしまって。お詫びと言ってはなんですが、よければ二階もご覧になっていきませんか? ほかに参加者の方もいませんし」


 視線がタイヨウの後ろに向いた。


 振り返ると、ぬえの姿はもうそこにはなかった。


「さぁ、どうぞこちらへ」


「じゃあ、おねがいします」


 有無を言わさぬ圧に、言われるがまま烏色についていった。


 軋む階段は急勾配で、ほとんど垂直だ。


 上った先、2階は一階と同じような広間だった。


 全面に木板の張られた四角形の部屋。


 壁には十字架や、お札。

 名前も分からない幾何学的なオブジェが、壁が見えなくなるほどに、びっしりと飾られていた。


「うわっ」


「どうです? 各地から集めた魔除けの数々」

 

 こんなの魔除けのオーバードーズだ。


 合わさり溶け合い、重複したその破魔の力は、神聖さを通り越してまがまがしい。


「もしかして、三階もこんな感じですか?」


「もちろん違いますよ。三階には、東の国から持って来た聖女があります」


「聖女?」


「はい、なんでも、どんな呪いも解けるそうで――」


 壁に置かれた魔除けが突如震えだす。


「何? 何?」


「タイヨウ! 下から嫌な気配がする」


 貼られていたお札が黒く変色し、十字架が爆発した。


「烏色さん! どうなってるんですか?」


 タイヨウが烏色を見ると、思わずぎょっとした。


 烏色の顔がぐにゃりと歪んでいた。


 それは恐怖とも怒りともいえない顔。


 虚空を見つめた目が四方八方へと跳ねまわる。


「奴が、復活しました。どうして……」


「奴って、もしかして」


「影法師です。影法師の封印が解かれました」


 どうして。そんなタイヨウの疑問は、一階から響く爆発音によってかき消された。


「ここはまずいです。すぐに出ましょう!」


「出ましょうっていっても、どうやって!?」


 先ほどの爆発の影響だろうか、階段の下からは黒い煙が絶え間なく吹き続けていた。


「私に任せてください」


「えっちょっ!?」


 烏色はタイヨウを脇に抱えると、背中から黒い翼を生やした。


 手を横に伸ばすのと同じくらいの大きさの翼から、数枚の羽が揺れながら地面に落ちた。


 落ちた羽は艶やかな黒をしていて、まるで堕天使のようだ。


「おとなしくしていて下さいね」


 烏色は手に持った錫杖を槍のように持ち、壁を突き破ると、タイヨウを抱えたまま飛び降りた。

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