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「馬鹿な事言ってんじゃないよ」
私たちの後ろからヘローの後ろに回ると、その頭に向けて拳骨を振り下ろした。
「いたっ何するんじゃ」
「そうやって、自分で勝手に決めて行動しようとするの、悪い癖よ」
フォンは悲し気にいう。
「私はこの生活に満足してるし、ここでこの世界が終わるまであなたの子孫と共に生きていきますよ」
達観した素振り。
「仕事はいいのかい?」
頭から殴られたというのに、ヘローはむしろ先ほどより元気そうだ。
「えぇ、先帰って掃除とかしてますね」
外に出るとフォンは羽を広げて、飛んで行った。ブォンとソニックブームを立てて一瞬で見えなくなった。
「あの速度を出せるなら一人で帰れそうね」
「ですね。なのに残ってくれて、本当に良い妻です」
それから一週間、町の観光などをしていると案外すぐにウォンから連絡があった。
「完成したの?」
ヘローの運転で工場に向かうと、ウォンと、クウ、ソラ、テンが自信満々に出てきた。
「ぜひ奥へ」
その表情から良い結果を期待してもよいだろう。
「これは――」
ガレージにはあのボロボロだった機体が、完全に修復された状態で置かれていた。
「どうよ、修復はもちろんのこと、空調・与圧システムによって高山病のリスクも減らしてる」
途端、饒舌になったウィン。ヘローはそれにただ頷く。
「っていうか、元の状態なんて、ただの空飛ぶ箱だったんだが、よく行けたな」
「まぁ、わしの技術力の賜物じゃな」
「なら最後まで墜落せずに着陸してほしかったけどね」
「ははは、ご容赦を」
「それで、いつ行くんだ? 一応もういつでも行けるぞ」
「ならもう行きましょう」
「そうじゃな。わしも準備するとするかのっ」
フォンは勢いよく腕を振り上げると、その姿勢のまま固まる。
「どうした?」
「……腰が」
フォンは、スローモーションのようなゆっくりとした動きで、腰を抑えながらその場に倒れた。
「何やってんだ爺さん!」
慌てて従業員が担架でフォンを運ぶ。
「あ~。どうする?」
気まずそうなウィンに、ツキはため息を吐く。
「こうなったものは仕方ない者。あなた操縦できないの?」
「まぁ、多少なら」
「ならいいわ。早くエデンの園に行きましょう」
ツキはさっさと決めると、飛行機に乗り込むよう私に促す。
「い、今からですか」
「えぇ、目指せエデンの園よ」
冷静に見えて、その実焦っているようで、ツキはすぐに向かいたいようだ。フォンも気乗りしないながらも操縦席へと乗り込んだ。




