表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界見浪記  作者: 天空 浮世
エデンの園に堕ちた果実

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/75

72

 意識が離れる寸前、ハンドルから離れた手が掴まれた。


 ひんやりと冷たい柔らかな手だ。


「ここまで来たのよ」


 ツキ様は私の手をハンドルごと包む。


「そう、ですね……!」


 私は身体に無理矢理力を入れて、ハンドルをより引き上げる。


 高度計に記された数字が凄まじい速度で増えていく。


 空気が薄くなるのを肌で感じる。フロントガラスには急上昇により霜が張っていた。


 ハンドルが重くなる。まるで、巨大な空気の壁に当たっているかのようだ。


「もう大丈夫よ」


 その言葉と同時に、ハンドルがふっと軽くなった。


 霜の隙間から見えたのは、懐かしきエデンの園だった。

 青い空の海に浮かぶ巨大な島には、豪華な入り口などはない。


 島を一周ぐるりと囲う気休めの城壁があるだけだ。


 有るのは天使が使う小さな扉だけ。外界からの客など想定していない。


 ここは鳥すら飛ばない遥か上空なのだ。

 

 飛行機を扉の近くに止め、木で出来た質素な扉を開けた。


 懐かしくも、記憶が消えたせいか、何処か他人事のような町並み。


 ツキ様は、私が立ち止まっていると、先へと一人歩いてしまった。私はその背中を慌てて追いかけた。


 辿り着いたのは巨大な庭園。黒いアイアンゲートの前には二人の門番が立っていた。


「誰だ。ここは大天使サキュエル様の邸宅であるぞ」


 鋭い眼光。その手に持った槍を交差させ、門を塞ぐ。


「ツキだ。サキュエルに言えばわかる」


「お前、大天使サキュエル様になんて口ぶりだ!」


 門番は眉を細かく動かし、歯を強く歯ぎしりしその槍で思い切りツキを突いた。


「危ない!」


 その突然の行動に、私は手を伸ばすことしかできなかった。


 ツキは、その行動を見て避けることもせずただその場に立っていた。


「な、どうなってる」

 

 もう終わったかと、思わず目を瞑ったが、聞こえてきたのは、門番の困惑したような声だった。


 目を開けると、ツキは相変わらずその場にたっていた。門番の槍はツキを貫くことができずに、ツキのローブに当たって止まっていた。


「はやく、サキュエルを呼んでくれる?」


「し、しかし」


「三度目はないよ」


 すぅっと声のトーンが下がって、周囲の気温が何度か下がったように感じた。


「し、少々お待ちを」


 その圧にやられて、門番の片方が逃げるように中へと入っていった。


 しばらくして出てきたのは、メイドの彼女だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ