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飛行機の製作は困難を極めた。
無理難題として出した素材の数々は、入手が困難なだけではない。
その素材すべてが一癖も二癖もあり、一流の職人ですら匙を投げるものだった。
そんなものを素人の私が飛行機に加工する。普通なら無理だと一蹴されるものだが……。
私はチラリと工場の隅に視線を送る。
「どうした?」
私の作業を監視するように椅子からじっとこちらを見るツキ様。
もはや、私に逃げる選択肢はなかった。
……もとより、逃げる気もなかったが。
「他の職人を呼んできます」
町にも機械いじりの得意な人はいた。私と違い、普通の人間だ。
「こりゃ、また見たことない材料だなぁ」
集まったのは数人。上は八十、下は十八。親子どころか、二世代離れた関係だ。
そんな人間たちが、ひとところに集まって見たことのない材料に唸っていた。
「どうですか? 出来そうですかね」
私もその輪に入る。それに職人の中で一番歳上の人が唸る。
「うーむ。やるだけやってみようか」
そこからは早かった。流石寿命に負われる生き物といったところだろうか。
道であろう素材にも臆せず踏み込み、解析、改良。私の知識と、ツキ様の助言も甲斐あって、飛行機づくりはそこからぐんぐんと進んでいった。
そうして、飛行機づくりは経ったの一年足らずで完成した。
「どうでしょうかツキ様」
出来たのは、まさに最高傑作。白く流線型の機体に、巨大なジェットが搭載されたものだ。
「早速、向かいましょうか」
既に試運転は済ませていた。いつでも行ける状態だ。私は操縦席に座る。
内装はジェット機の様になっており、椅子は操縦席の他に、テーブルに隣接されたものがふたつ向かい合っていた。
「見た目は一丁前だが、これでエデンまで行けるんでしょうね」
「行ってみせますよ」
ツキ様とその子どもであるタイヨウがソファに座ったのを確認し、私は飛行機を飛ばした。
重力が機体ごと体に押し寄せる。全身が地面に押し付けられているようだ。
しばらく浮上すると、急に体が浮いたような感覚になる。
機体が崩壊する様子もない。硬度はまだエデンの園には遠い。
「ここからさらに上へ、行きます!」
ハンドルを引き、またさらに上空へと向かう。窓越しに見える景色は一面真っ白な雲の海で、もう地上は見えない。
どれほど昇ればいいのか、ひたすらに期待を上へ上へと向かわせた。
フロントガラスががたがたと音を立てる。急激な上昇により意識がぼやけ、ハンドルを持つ手が震える。
「まずい」
血が頭まで来ていない。このままだと、意識が――。




