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工場の中では、金属を削ったり叩いたりする高音が常に流れていた。
職人だろうか、ウィンと同様のつなぎに身を包んだ羽の生えた人たちが忙しなく動いていた。
作っているのは、やはりというかなんというか、飛行機だった。
しかし、その見た目は先ほど乗って来たものとは違い、流線型の見た目のまさに飛行機の中でも、何十人も乗せられるような大型の旅客機のような見た目をしていた。
「それで、あのツキさんが、なんの御用で?」
「ウィン。全く。あの子は礼儀がなっとらんで申し訳ないですね」
「いや、よい。エデンの園に向かう飛行機さえあればの」
「エデンだぁ? おい、爺さん。この蛇はイッちまってんのか?」
「ウィン!」
「よい。それで、エデンへ向かえる飛行機はどれだ?」
「んなもん、有るわけねぇだろ! あれがどこにあんのか分かってんのか」
「もちろん。この工場からだと、大体上空四百キロほどかな」
「そんな遠くに」
その距離がいかほどかというと、大体ここからマスターの元までが大体そのくらいだ。車でも半日はかかる。
それを上へと、上空へととなると、その大変さは比にならない。
「そうだ。んな距離、飛べるわけねぇだろ」
「ふむ、それはおかしい」
ツキはまるで常識を説くかのように話す。
「ならば、あのとき。ヘローの機体でエデンへ行けたのはなぜだ?」
「はぁ? あの話は俺をからかうためのおとぎ話だろっていうか、なんで知ってんだよ。ってそういやツキなんだもんな」
「あの、すみません。話がうまく理解できないのですが」
「うむ、そしたら、わしとツキ様の昔話を話そうじゃないか」
ぬっと出て気たヘロー。それにウィンは「うぇ、またあの話だよ」といって工場の奥へと逃げてしまった。
しかし、そんなこと意にも介さず、ヘローは目を瞑って過去の話を始めた。
「これは今から三千年前の話じゃ――」
それはまだこの街が全く発展していなかったとき。
あの聖女から命からがら逃げてきたとき。
聖女は、安全安心な防衛装置として売り出されていた。そして、そんな謳い文句にまんまと騙された町民は、この地へきて、半ば放心状態となっていた。
そんな町民を哀れみながらエデンの園から地上を覗いていたのがヘローだった。
「あなた、よく地上なんて見て、飽きないですね」
双眼鏡で地上を覗いていたヘローに話しかけてきたのは、眼鏡を付けた女の天使だった。
黒と白のメイド服に身を包み、背中には純白の羽が生えており、頭上には明るく発光する輪が浮かんでいた。
ヘローと彼女は大天使に仕える天使だった。




