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箱の中に入っていたのは、黒くて小さなプラスチックの部品のようなもので、中心に小さなぽっちのようなものが付いていた。
それは、一定の間隔で赤く点滅を始めた。
「ふむ、これは発信機かな?」
「発信機?」
どうしてそんなものが、この中に?
「もしかしたら、君の過去にかかわってくるものかもしれないね」
「はぁ」
そうはいっても、そんなものを付けられる状況とはいったい――僕は若干もやもやとしながらも、それを箱から取り出し、ポケットに閉まった。
タイヨウが箱を開けた直後。そこから遠く離れたホテルの一室で、素っ頓狂な声が響いた。
「ツ、ツキ様!」
セロは転げ落ちるようにベッドに寄る。
「タイヨウ様の居場所が分かりました!」
「それは、本当か?」
ベッドから起き上がるツキ。セロは息を切らし、興奮を隠さずにありのままを伝える。
「なぜかは、分かりませんが、タイヨウ様の位置情報として、情報が送られてきました」
「タイヨウは、タイヨウはどこにいるの!」
「この真上。空中に浮かぶ浮島です」
位置情報の示すのは、この歓楽街の遥か上空。通称エデンの園という天使の住む国だった。
「エデンね」
「はい。ただ向かう方法がありません」
「私にあてがあるわ」
ツキはベッドから降りると、セロの身体を上って肩に乗った。
「そうと決まったら早速行くよ」
「行くって、どこにですか?」
「空輸の国、プローレンよ」
「どうやって向かうんですか?」
私は運転席に座り、ツキに聞いた。
ぬえはまだ見つかっていないが、タイヨウ様が見つかってからでも探すことは可能だ。
ここまでの旅路を共にしたタイヨウの居場所がわかるのに、捨て置いて一人探すのは、主の主義に反する。
どうせぬえの居場所は地図で分かる。自己修復により、永遠に近い時間を生きる私にとって、その程度の寄り道は些細なことであった。
「それじゃあ、道案内はお願いしますね」
薄暗い街の中を、車で走るが、道行く人は車など気にせず道の真ん中を歩いていて、徐行運転でしか進めない。
しかし、それでもゆっくりと進むしかない。本当ならクラクションでも鳴らしながらこいつら全員轢き飛ばしたいところだが、我慢だ。
「セロ、もうここには来ないんだし、やっちゃいなさい」
「お望みならば、行きますよ!」
私は、クラクションを鳴らしながら、全力でアクセルを踏み抜いた。




