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寿命を延ばす方法というのは、古今東西様々だ。
その中で実際に人間の寿命が延びたり、不老不死になったものは、必ず代償が必要なものや、出まかせが多かった。
その中で訪れた場所のひとつには、セロの主やあの天使どもの住む国も含まれていた。
「その為に来ていらしたのですね」
タイヨウがまだ押さないころ、ツキとともに来ていたのを確かに覚えていた。
姿こそ変われど、セロはそれが分かっていた。
だからこそ、再び相まみえた際には、顔には出さずとも、少なからず驚きを覚えた。
「では、ツキ様はその蛇の姿が本来の姿なのですね」
「えぇ。というより、人の姿に成れなくなったの」
それは天使の国にあった文献を知人から受け取った帰り道。預けていたタイヨウを迎えて森の中を歩いていた。
いたって普通の帰り道。背中で寝息を立てるタイヨウを起こさぬよう、一定の速さで歩いていた。
人の姿をしていれど、神格。その背中は世界でも屈指の完全地帯だ。
それでも、完璧に安全な場所など存在しない。
祠近くの草むらから黒い影が飛び出した。
それは黒い蛇。丸太のように太い胴をくねらせて、赤黒い口を開いて私たちを襲ってきた。
それは神から堕ちた存在。恐らくどこかの祠から彷徨ってここにやってきたのだろう。
わずかに反応が遅れ、タイヨウの背中に傷がつく。
タイヨウがその激痛に眼を覚まし、泣き叫ぶ。
「運にも見放されたか」
黒蛇の口から黒く、ネバッとした液体が垂れる。牙から流れ落ちた毒液だ。
「そっちも色々あるんだろうが、八つ当たりでこんなもん許さないから」
私は地面にタイヨウを置き、白い蛇の姿へと変わる。
黒蛇が叫び、口を開くと同時に、その下あごが切り裂かれる。
白い閃光となったツキ。すでに黒蛇の背後に移動しており、口には黒蛇の下あごを咥えていた。
黒蛇がその痛みを認識したころには、また元の位置に戻ったツキによって、上半身を細切れにされていた。
「タイヨウ、大丈夫か?」
タイヨウは返事をしない。体内に完全に毒が回ってしまっていた。もう心臓の音すら聞こえなかった。
冷静な私の脳内では、どこかでここまでかと思いつつも、はいおしまいと生を手放すわけにはいかなかった。
私は天使の国で渡された資料。いわゆる禁書を開く。
それは『ネクロマンス』という死霊術の書かれた本。その中には死体を生き返らせる方法もあった。
しかし、それを行うには重大な欠陥があった。




