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異世界見浪記  作者: 天空 浮世
影法師の後ろでヒョーと鳴く

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6/22

06

 天を貫く永塔婆(エントゥーバ)は、近くで見上げてもその全貌はつかめない。

 タイヨウは鳥居をくぐると、石畳を通って建物の前へと近づいた。


「すみません」

 入り口の前に立っていた人に話しかけた。

「おや、なんの御用で?」

 

 オレンジの袈裟を着ており、手には槍のように長い錫杖を持っていた。手足には黒い羽がびっしりと生えており、口には手足と同じ色のくちばしが付いていた。

 

 胸に突き刺さる芯の通った声。この声でツボなんかを勧められたら思わず買ってしまいそうだ。


「ここで、説教? が聞けるって聞いて」

「あぁ、それでしたらご案内しますね」

 

 鋭い目が柔和に曲がって中へと促されるが、タイヨウの肩に乗ったツキを見て、その動きが止まった。


「すみません。そちらの肩の蛇は……」

「ツキのこと?」

 

「なに? 蛇は入っちゃダメなの? それとも、私がペットにでも見えた?」

 

 明らかに不機嫌な声。僧侶は慌てて答えた。

「失礼しました。もちろん問題ありません。どうぞお入りください」


 一瞬ひやりとしたが、問題なく中へと案内された。

 永塔婆の中は意外に広い。

 木の匂いとお香の香りで満ちていて、立っているだけで、リラックスした気持ちになる。


 中に入って廊下を進むと広い部屋に出た。

 等間隔に座布団が敷かれているが、座っている人は見当たらない。

 

 部屋の最奥には、仏像と腰ほどの高さの扉があった。扉はしめ縄とお札で、厳重に縛られていた。まるでなにかを封印しているみたいだ。

 

 「申し遅れましたが、今回、説法を担当いたします。烏色(からしき)と申します」

 

 タイヨウを連れてきた僧侶が振り返り、軽く一礼した。

「あ、僕はタイヨウ、こっちはツキです。こちらこそよろしくお願いします」


「それでは、タイヨウさん。もうしばらくしたら始めますので、お好きなところにお座りください」

 

 言われるがままに、適当な位置の座布団に腰を下ろした。部屋の中は空調が効いているのか、部屋全体が少しひんやりとしていた。


「ねぇ、あの扉なんだろうね」

 タイヨウの視線の先には、しめ縄で強固に縛られた扉。

「ああいうのは気にしないのが正解よ」

 ツキはそれの正体に心当たりがあるのかないのか、適当な言葉ではぐらかした。


「あれ、気になるよね」

 ツキではない、背後からの声に驚いて振り返った。

 茶色い体毛に覆われた体。充血したような眼で、タイヨウの顔を覗き込むように立つ猿がそこにいた。


「ねぇ、そのリュック、何入ってるの?」

 声を出し慣れていないのか上ずった声。その目線はタイヨウを上から下まで見定める。


「えっと」

「あんたには関係ないことよ」


「ふーん、ねぇ、そのリュック。ぬえに頂戴?」

「だめだよ。これは大切だから」

 自らをぬえと名乗る猿から出された手に、タイヨウは首を横に振った。

 

「そっか、残念。ほしいなぁ」

 分かり易く肩を落として、ぬえは左後部の座布団に座った。


「びっくりした。僕と同じ参加者だったんだね」


「タイヨウ……あまりかかわらないようにね」


 ツキはぬえが離れてもなお、後方を警戒して睨んでいた。

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