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異世界見浪記  作者: 天空 浮世
魔惑の街で天を貫け

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53

 セロとサキが対峙する少し前。タイヨウは深淵の中でまどろんでいた。


 そこは下も東も左も北も分からない。自分が今揺蕩っているのか、落ちているのか。もしかしたら昇っているのかもしれない。


 まるで雲のベッドでくつろいでいるような夢見心地のなかで、タイヨウは暗闇から一転。


 暗闇が切り開かれ、明るい場所に出た。


 そこは庭園だった。青々とした芝生に、色とりどりの花。庭園の中心には白いカーブを描いた柵によって机を覆っていた。


 それはまるで巨大な鳥かごのようで、だけど決して閉塞感はなく、むしろ清涼感や爽快感が大きい。


 机の上にはティーポットがひとつ。ティーカップがふたつ置かれていた。


 椅子と机は柵と同じ色で、細かな装飾が入っていた。


 椅子に座っていたのはタイヨウとサキ。しかし、どちらも本来の姿より幼い。タイヨウの背中にリュックはなく、サキの羽は小さいながらも純白に光っていた。


 これは――僕の記憶?


「ねぇ、紅茶美味しい?」


 幼いサキがタイヨウに聞く。その顔は幼くもくりくりとした瞳に、整った顔立ちをしていた。


「うん。美味しいよ」


「良かった。これね、私が選んだんだよ! いろいろ試してね。私のお気に入りなの」


 サキは紅茶を自信満々に語る。それをタイヨウは笑顔で頷きながら聞く。


 「あ、ごめん。話過ぎちゃったよね」


「どうして? もっと聞きたいな」


 タイヨウは笑顔で言う。それにサキはまた咲いたような笑顔を見せて話を続けた。


 当然、タイヨウにこのような記憶はない。場所すら不明だ。


 しかし、その場に座るタイヨウは確かにタイヨウ本人で、この目の前に広がる光景が真実だと、不思議と確信を持っていた。


「ねぇ、タイヨウは、ここに住むの?」


「ううん。また旅に出るよ」


「そっか」


 サキはしゅんと顔に影を落とす。


「ねぇ、また会えるよね」


「そうだね。きっと会えるよ。そうだ」


 タイヨウはポケットをまさぐる。


「……あれ? ここに入れたんだけど――あった!」


 タイヨウが取り出したのはブローチの付いたネックレス。


「一緒に写真撮って、ここに入れておこうよ。このネックレスがあれば、離れてても一緒だよ」


 それはサキが持っていたネックレスだ。やはり、これはただの夢ではない。タイヨウの過去の記憶に違いないものだった。


「うん……!」


 サキはそれを大事そうに抱える。


 サキとタイヨウがメイドらしき人に写真を撮ってもらう。


 メイドの背中にもやはり羽があり、頭上には輪が浮かんでいた。

 

「タイヨウ。そろそろ行くよ」


 写真を撮ったタイミングで、女性の凛とした声が響いた。

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