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「ねぇ、自分を偽って生きるってどういう気持ち?」
ベッドに倒れたタイヨウは、いまだ意識が朦朧としていて、その質問に答えることはできない。
「きっと、みじめで、むなしくて、寂しいと思うんだ」
サキは寂し気な表情でタイヨウを見る。
「それじゃ、お休み」
その言葉を最後に、タイヨウの意識は遠く、意識の奥深くへと潜っていった。
「――ねぇ、居るんでしょ?」
タイヨウが眠りについた後、サキは虚空へ向けて話しかける。
「タイヨウはどこなの?」
「そこにいるでしょ。見て分からない?」
タイヨウのリュックの中から顔を出したツキの冷たい声。
「やっぱりいたんだ」
サキは突然現れた話す蛇に一切驚いた素振りは無い。
「ねぇ、それ。タイヨウじゃないよね? 本物のタイヨウはどこ?」
それは疑問にしては確信めいた聞き方だった。
「タイヨウはどこって、言われても、ここにいるのがタイヨウよ。それ以外ないじゃない」
「ふーん。じゃあなんでタイヨウはずっと鞄を背負ってるの?」
サキはこれ以上話してもらちが明かないと察して、話題を変えた。
「それは」
ツキは言い淀む。
「ねぇ、そのかばんにどんな秘密があるの? そのかばんに本物のタイヨウの手掛かりがあるんでしょう?」
それを好機とばかりに、サキはまくしたてながらリュックに近づく。
「それ以上近づくなら、分かってるわね?」
「どうできるのよ、そんなよわっちぃ生命力で」
サキはずんずんと近づく。ツキが牙をむきだして襲い掛かるが、抵抗むなしく、あっけなく引きはがされ、地面にたたきつけられた。
「そう、ここにいたのね」
サキは鞄を開けて、そうつぶやくと、鞄を無理やり引きはがそうとする。
「やめなさい! セロ! セロ!」
ツキは地面を引きずる様に這うと、目一杯の清涼で叫んだ。
「お呼びですか? ――なるほど」
駆けつけたセロは、その部屋の状況を理解して、すぐにソーイングセットからハサミを取り出し、サキとタイヨウの間に突き出した。
「危ないなぁ」
ジャキンという鋭い音。セロは腕を切り落とされる直前で、タイヨウのリュックから手を離した。
「私は、タイヨウに会いたいだけなの。なんで邪魔するのかな?」
セロの背中から大きな白い翼が広がる。頭には金色に光る輪。それはまさに天使だった。




