49
それは街の中心部からひどく離れた場所に有った。
まるで街から隠れるように存在するそれは、この町の中で唯一正常な活気のある場所と言って良いだろう。
市場はその名に違わぬ活気に満ちていた。そこかしこから男臭い怒号に似た声が響く。
店で使う料理の材料を買いに来た店主の女性らしき人たちが、集い街の中心から遠く離れたとは思えないほど人で満ちていた。
そして何より、そこは明るかった。
ネオンの不健康な発光とは違う、正真正銘陽の光が市場を照らしていた。
日の光を浴びていないのは、ほんの数日だというのに体は日の光を欲していたのか、体が暖まり心なしか元気になったような気がする。
「まさかここまで日光をありがい日が来るとは思わなかったよ」
タイヨウは眩しいくらいの日の光に眼を細める。
「ですね。ただ当初の目的を忘れないようお気を付けください」
「もちろん」
タイヨウは市場の活気に揉まれながらも、ぬえを探しながらゆったりと市場を横断していった。
市場もだいぶ歩き、人の波に辟易としていると、突然広場へと出た。
出店が無いからか人は居らず、木のベンチが点在していた。
真ん中に置かれた噴水は日の光を反射してキラキラと輝いており、そんな噴水の上には彼女がいた。
彼女は噴水の上を浮遊していた。背中からは真っ白な翼が一対生えており、その長さはタイヨウが両手を伸ばすより長かくて、日の光に照らされて輝いていた。
「サキさん」
「あれ、どうしたの? こんなところに」
サキは噴水の上を、まるで階段でも降りるかのようにゆったりとした動作で地上へ舞い降りた。
「えっと、ぬえを探しに」
仕舞われた翼を名残惜しく眺めながらタイヨウは言った。
「あれ? あの紙見なかったの?」
「えっと、これですよね?」
タイヨウはあの夜、渡された時刻の書かれた紙を渡した。
「そう。書いてあるでしょ?」
「いや、これだけではなんなのか……」
「……まぁ良いわ。そうだこれ、渡し忘れてたから」
彼女はポケットから名刺サイズの黒い紙取り出した。
そこには『Happy Birthday』と書かれており、金文字で住所が書かれていた。
「今夜の、私の誕生日会の招待状」
「えっと、ぬえは?」
「きっと会えるよ。じゃあね。タイヨウ」
彼女はそう笑ってまたどこかへ飛んで行ってしまった。
「……あれ? 僕名乗ったっけ?」
サキは既に遠くへ飛んでおり、その疑問に答える人はいなかった。




