48
「はいよ。とんかつ定食ね」
慌てて適当に指さしたが、意外と悪くないチョイスだった。
「そっちの嬢ちゃんは?」
「私は、アンドロイドですので」
「アンドロイド? 食べられないのか?」
「いえ、食事昨日はありますが……」
「なら同じので良いね?」
「ですが……」
「大丈夫、うちは女の子はタダだよ!」
セロは拒否しようとするが、女将は押し切って注文を切って戻ってしまった。
「なんだかすごい人だね」
「ですね」
機械じかけの表情だが、どこか疲れているように見えた。
「お待たせ! とんかう定食ね!」
それは、けっして豪勢でも、皿からはみ出るほど多いわけでもない。
いうなれば普通。ザ・普通の定食だ。
しかし、その暖かい料理はこのネオンの街に荒れた胃にはあまりにも美味しそうにみえて仕方なかった。
「それじゃあ、いただきます」
タイヨウたちはただ無心で食事にありついた。
やはり、目を見張るほどの味ではないが、安心する味だ。
母親の記憶などないが、おふくろの味というのはこういうものを指すのだろう。
なんだかんだといったが、タイヨウは結局、皿にコメの一粒、衣のひと欠けらも残さずに完食した。
タイヨウはそこでやっと、なぜこの食堂に女性ばかりいるのか理解した。
料金がタダだから? 違う。
このネオンで擦れた心を癒せる唯一の場所だからだ。
ケミカルな味に飽き飽きした体には、こういう優しい味が染みるのだ。
「ここは、この町で働く人のオアシスなんだね」
こういう場所は、部外者があまり長居する物ではない。
タイヨウは早々に支払いを済ませようと店員を呼んだ。
「あの支払いを」
「はいよ。お会計ね!」
出された伝票の金額を払う。そうだ、ついでに――。
「あの、これ見た記憶ありませんか?」
出したのはぬえの写真。バーで蘭から見せてもらったものを印刷しておいたものだ。
「ん~?」
ゴミ箱を漁るぬえの写真に、腕を組んで唸る女将は、手をポンと叩く。
「そうだ、今朝買い出しに行ったときに見たよ」
「どこでですか!?」
タイヨウは食い入るように聞く。まさかたまたま入った店で情報が手に入るとは晴天の霹靂な出来事に、タイヨウは驚きと興奮を隠せない。
「市場で食べ物盗んでたんだよ。この街で唯一の市場だから、あんなのが現れると、大変だよ。おかげで買い物しそびれちゃってねぇ」
「それは、大変でしたね。市場ですよね? それってどこに」
「ここを右にまっすぐいけば入れるけど、なんだい、わざわざ行くのかい?」
「はい、教えていただきありがとうございます!」




