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異世界見浪記  作者: 天空 浮世
全知は全能にあらず

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 針に糸を通すような細い道をすり抜け、車を走らせた。


 その運転テクニックは目を見張るもので、人の域かう道でも難なく進む。


「すごい! よくこんな操縦で何にも当たらないな!」


「ね、自分でもびっくりだよ」


 素早い手さばきで、レバーとハンドルを動かしながらも、タイヨウは頭は真っ白だった。


 頭で考えて操縦しているわけではなかった。こんな操縦方法、あの老人には教わっていない。


 身体が覚えていた。


 タイヨウはエレベーターまでたどり着くと、ドリフトしながら止まった。


「お帰りなさいませ、その車は?」


 暇そうにしていたセロは、突然現れた古めかしい車に、思わず立ち上がった。

 

「えっと、貰いました」


「じーさんに譲ってもらったんだ!」


「おじいさんですか?」


「じーさんはじーさんだ!」


「あぁ車の開発してるって人か」


「まぁ、足が手に入ったなら良いことですね」


 セロがエレベーターのボタンを押す。


 一台車が増えたところで、エレベーターの動きに支障はない。


 エレベーターが降り切るまで、サルビアは助手席でタイヨウの腕をきゅっとつかんでいた。


 「ねぇ、また絶対、会えるよな?」


 エレベーターがチンっと音を鳴らして止まると、小さな声でサルビアはタイヨウに聞いた。


 普段の快活さは身を潜め、上目遣いでタイヨウを見つめる。


「大丈夫。ぬえから取り返したらまた戻るから。そうだ、サルビアもお祭りに来なよ。良いよね? セロさん」


「はい」


「お祭り?」


「でっかな機械の蜘蛛の上でお祭りやるんだよ。その時になったら招待するから」


「うん……! 約束な!」


 サルビアは、目を腕で拭い、いつもの元気な笑顔を見せた。


「それじゃ! またな!」


 サルビアをセウストに乗せ、セロを助手席にタイヨウたちはアバロンを後にした。


 逸楽街まではまだ遠い。それでも、サルビアからの贈り物に乗って行けば、きっとすぐ着くだろう。

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