42
針に糸を通すような細い道をすり抜け、車を走らせた。
その運転テクニックは目を見張るもので、人の域かう道でも難なく進む。
「すごい! よくこんな操縦で何にも当たらないな!」
「ね、自分でもびっくりだよ」
素早い手さばきで、レバーとハンドルを動かしながらも、タイヨウは頭は真っ白だった。
頭で考えて操縦しているわけではなかった。こんな操縦方法、あの老人には教わっていない。
身体が覚えていた。
タイヨウはエレベーターまでたどり着くと、ドリフトしながら止まった。
「お帰りなさいませ、その車は?」
暇そうにしていたセロは、突然現れた古めかしい車に、思わず立ち上がった。
「えっと、貰いました」
「じーさんに譲ってもらったんだ!」
「おじいさんですか?」
「じーさんはじーさんだ!」
「あぁ車の開発してるって人か」
「まぁ、足が手に入ったなら良いことですね」
セロがエレベーターのボタンを押す。
一台車が増えたところで、エレベーターの動きに支障はない。
エレベーターが降り切るまで、サルビアは助手席でタイヨウの腕をきゅっとつかんでいた。
「ねぇ、また絶対、会えるよな?」
エレベーターがチンっと音を鳴らして止まると、小さな声でサルビアはタイヨウに聞いた。
普段の快活さは身を潜め、上目遣いでタイヨウを見つめる。
「大丈夫。ぬえから取り返したらまた戻るから。そうだ、サルビアもお祭りに来なよ。良いよね? セロさん」
「はい」
「お祭り?」
「でっかな機械の蜘蛛の上でお祭りやるんだよ。その時になったら招待するから」
「うん……! 約束な!」
サルビアは、目を腕で拭い、いつもの元気な笑顔を見せた。
「それじゃ! またな!」
サルビアをセウストに乗せ、セロを助手席にタイヨウたちはアバロンを後にした。
逸楽街まではまだ遠い。それでも、サルビアからの贈り物に乗って行けば、きっとすぐ着くだろう。




