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「うむ、背もたれをなくすのは簡単じゃが、そうすると快適性に難があるの」
「それならさ、荷物の部分だけ穴開けるのはどうだ?」
座席を一瞬で取り外し、外に出して議論する二人。タイヨウは完全に蚊帳の外で、椅子に座ってぼうっと二人を眺めていた。
「そうしたら、頭の所はどうする。頭の部分が浮くことにならんか?」
「あぁ、ヘッドレストね。うーん」
気づけば設計図まで広げて、シルビアももう完全に職人の目と変わっていた。
「こういうのは?」
「ほう、これなら」
そうしてタイヨウの知らぬ間に会議を終わらせた二人は、早速改良にとりかかった。
その手さばきは見事なもので、短い言葉で工具を渡しあう姿はまさに阿吽の呼吸。オペのような洗礼された動きだった。
「できた!」
そうして完成したのは、ヘッドレストを囲むように鉄の棒を巡らせ、上から吊されるようにした座席。
背もたれはタイヨウの荷物がちょうどはまる形で、これなら運転に不自由はなさそうだ。
「さぁ、乗ってみるのじゃ」
「はい」
タイヨウは手汗をズボンで拭い、運転席に座った。
「すごい……!」
背中をゆっくりと後ろに預けると、ちょうどタイヨウの背中で止まった。
穴が開いているからてっきり背中を預けると、そのまま倒れてしまうかと思ったが、ちょうどタイヨウの背中が背もたれに当たるタイミングで止まった。
「すごいです。これなら僕でも運転できます」
アクセルとブレーキ、クラッチを確認してハンドルを握る。古い車だが、結局運転など変わらない。
タイヨウは慣れた手つきでエンジンをかけた。
「良いじゃん! 運転したことあるのか?」
サルビアが助手席に乗り込む、タイヨウはその言葉に少し考えた。
「いや、車に乗ったのなんて、これが初めてのはずだけど、なんでかな?」
「なら才能だな! タイヨウには運転の才能があるんだ!」
満面の笑みでそう言われたら、本当にそうな気がしていて、タイヨウもまんざらではなかった。
「うむ、わしの見込んだ通りじゃったわ」
「いや、じーさんのは適当でしょそれ」
「はっはっどうだかのう、じゃが、その様子なら運転は大丈夫そうじゃな」
「ってことは――」
「うむ、お主にやろう。くれぐれも大事にするんじゃの」
老人が壁のスイッチを押すと、店のシャッターが開いて外に出られるようになった。外に積まれていたがらくたも、きれいに車輪の通る場所だけは残されていた。
「ありがとうございます!」
「それじゃ。いってくるよじーさん!」




