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その雑多な店外とは異なり、その内装はっ予想に反してとてもきれいなものだった。
室内はガレージのような空間で、レジや商品棚などは一切ない。
室内の真ん中に鎮座した車両。鼻先の長く、フロントガラスしかなく、再度の窓が無い黒色の車。
現代によく見るような車ではない。白黒映画でしか見ないような代物だ。
「車って、これですか?」
「そうじゃ。すごいじゃろう、これまでは煙で動く汽車か、馬車しかなかったが、この形はわしが作り上げたんじゃ。これは世紀の発明じゃ」
「えっと、でもこの車って」
「タイヨウ」
サルビアがタイヨウの袖を引き、指を自身の唇に当てた。
「あーっと、すごいですね?」
よくわからないが、こういうときは先人の知恵に従うのが最も正しい。それがこの世界で生きる術だ。
いわゆる、処世術ってやつだ。
「おー、分かってくれるか、じゃがそれでも操縦方法が分からん奴に渡す気はない」
老人は手でタイヨウを呼んで操縦席に座った。
「それがアクセル、これがブレーキ。ハンドルは分かるか?」
それは、大部分がタイヨウも知っている車の内部構造であったが、タイヨウは車の操縦などしたことない。
鞄を背負ったままでは運転など、できるはずもなかった。
「ほれじゃ、実際に運転してみるのじゃ」
「えっと」
操縦方法はなんとなく理解できた。しかし、運転は……タイヨウはしぶしぶといった様子で操縦席に座った。
背中のリュックに圧迫されて、体が前景になる。ハンドルが胸を圧迫して苦しい。
「なんじゃ、背中の下ろさんと出来んじゃろ」
「えっと、それは……」
これを下ろすのは出来ない。
――どうして、下ろしてはいけないのだろうか。
「おい、もしかしてからかっておるのか?」
タイヨウに芽生えた疑問は、だんだんと声を荒げ始めた老人の声によってかき消された。
今はそんなことに思いをはせるより、何か言わなくては。
「いえ! 舐めてるとかではなく、下ろせなくてですね」
「なに? それはどうしてじゃ」
「えっと……」
「じーさん! それなら背もたれを改造するのが職人ってもんじゃないのか?」
タイヨウが返答に困っているのに築いたシルビアが口を出した。
「うむ……それもそうじゃ。せっかくこれを操縦する気のあるやつが来たしの。分かった。ちょっと待っとれ」
老人は扉を開けると、操縦席からタイヨウを追い出した。




