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そこかしこから噴き出す黒煙の中をタイヨウとサルビアは歩いていた。
セロたちはというと、この階層の入り口で通れず、置いていくことになった。
ツキが言うには「文明の問題」らしい。
ツキは、最近前にも増して寝ている時間が多くなった。一日に一度、起きている姿を見られれば良い方だ。
最初は人間を嫌って出てこないのかと思ったが、そういう訳でもなさそうで、その理由はタイヨウにはわからなかった。
そういう訳で、結局この階層に降り立ったのは、タイヨウとサルビア。そしてリュックで眠っているツキだけだった。
「それで、どこに向かってるの?」
サルビアの先導で奥へと進んでいく。
「内緒!」
いたずらっぽい笑みで彼女は笑って跳ねるように黒煙の街を進む。
とんてんかんとかなず値を打ち鳴らす音に紛れて、機械の作動音もいくつか聞こえてきた。
「着いたぞ!」
いくつもの放置されたホイールのような部品。フレームなどのスクラップの中に埋もれるように建てられた店。
看板にはブラックロードと、ネオン文字で書かれていた。
「ここ?」
「おう!」
サルビアが店に入ろうとした時、突然店内から爆発音とともに、黒煙が噴き出してきた。
「じーさん!?」
顔を真っ黒にした老人が席をしながら出てきた。
「まーた失敗じゃわい」
煤を被ったつなぎに、工具を腰に付けたお老人は、こちらに気づくと煤を被ったまま近づてきた。
「うーむ? お主、どこかで見た顔じゃのう? はて……」
老人はサルビアの顔をじろじろと見て唸る。
「――あっ思い出した、お隣の孫娘の――!」
「違うよ! 俺だよ俺! サルビア! まったく、じーさんは本当に車以外興味ないよね」
「あー! そうじゃったそうじゃった。いやーここまででとったんじゃがなぁ」
「まったく、いい加減なんだから」
「それで、隣のは誰じゃ?」
老人は笑っていた目を細め、鋭い眼光でタイヨウを見た。
「こいつはタイヨウ! じーさんにこいつの車作ってもらおうと思ってさ!」
外装から車関係なのは分かっていたが、作った? 部品はあるようだが、車は自作する物なのだろうか。
「それは構わんが……」
今度はタイヨウを見る老人。上から下までじっと観察した老人はまた鋭い目つきでタイヨウの目に視線を戻した。
「わしの作る車はいわば子供じゃ。ただでとはいかんのう」
老人は人差し指を立てた。
「せめて、操縦と管理は出来んとのう」




