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「これは、大変失礼しました!」
どうしてここに。それは、その女にとって、最大の誤算だった。
自身の頭にはこの世のすべての生命体のデータが入っている。それは比喩でも何でもない。
そんな自身のデータに、一切合致するものがない。
そんなもの。可能性としては一つしかあり得なかった。
「な、なんの御用でしょうか、王子」
この世で唯一、情報が完全規制された存在。それはこのアバロンを統べる王のみだ。
「ん~。そこの人たち、どうするの?」
体を揺らしながら、王子は聞く。それに、受付は額から汗wお流しながら、生唾を飲み込んだ。
「こちらに危害を加える恐れがありましたので、牢へ」
「ねぇ、この人たち、僕の恩人なんだ。少しくらい、融通利かない?」
「も、もちろんです」
フードの子供は、彼女の耳元でささやく。それはタイヨウたちには聞こえないようにされた脅しだ。
「ねぇ、何が知りたいの?」
王子はタイヨウの元に来た。周りの衛兵は既にその場を離れ、持ち場へと消えていた。
「あの巻物を返して欲しいんだ。取引はキャンセルで……」
「巻物ね?」
王子はいまだ傅いたままの受付のほうを向く。
「はい! こちらです!」
受付は転がる様にして巻物を王子に渡した。
「他には?」
「えっと、じゃあ、このぬえの居場所の分かる地図、貰ってもいいかな?」
「うん。いいよね?」
王子が受付を見ると、首を縦に何度も振った。
「他には?」
「えっと……」
タイヨウたちは困惑していた。先ほどまでの状況とは一転。まさに形勢逆転の状態で、受付の顔がどんどんと青くなっていく。
「他は、大丈夫かな」
「そっか、じゃあ最後に、これは僕から、君へ向けた個人的な贈り物だよ」
タイヨウの手に、何度も握っているのを確認するようにぎゅっと押し付けられたのは、ちいさな白い箱。
その大きさは手のひらにすっぽりと包み込めるほどの大きさ。
「中身は、見ちゃだめですよ。時が来たら、勝手に開きますから」
口元は、あの時と同じ。にこりと笑っていた。
「ありがとう、大事に持っておくよ」
そう言われたなら、従うに越したことはないだろう。
タイヨウはポケットにその箱を仕舞った。
「タイヨウ様。そろそろ戻りましょう」
「あ、はい! またね!」
「うん。また、会えるよ」
タイヨウは、小さく手を振るフードの王子に分かれを告げ。図書館を後にした。
結局、あの子の素顔を見ることは叶わなかったが、また会えるなら、その時にでも見ればいい。




