36
「衛兵! この人を捕らえて!」
女性の叫び声に合わせて鎧姿の男が複数人現れた。
「ごめん、取り損ねた」
タイヨウは、この状況に公開した様子はなく、悔しそうに歯噛みしていた。
「何をしているんですか? こんなになって、取引は成立していたじゃないですか」
「だって、セロさん、あれ大切なんでしょ? そんなもの渡すくらいなら、自力で探したほうがいいよ。そもそも情報を盾に、大切なものと交換なんて、ひどいじゃん」
なんって自己中な……こんなことになって、叱らなければなのに。そう思うのに、どうしてかセロの口元は笑みを浮かべていた。
「まったく、お人よしですね。こうなったものは仕方ありません。私の設計図を取り返して、逃げましょうか」
セロはあの大きなハサミを取り出す。タイヨウも拳を握って臨戦態勢へと入った。
「あのハサミには注意して! 隣の男は力が強いから!」
受付の女は、セロの設計図を抱えたまま衛兵に指示を出す。タイヨウたちの情報など、当然のごとく入っており、その指示に従う衛兵の連携もすさまじい。
セロはハサミを大盾で防がれ、挟み込むように立ち回られて非常に動き難そうだ。タイヨウも槍を持った衛兵に囲まれ、リーチが届かない。
「中々、大変ですね!」
セロは力のままハサミで大盾を持った衛兵を吹き飛ばすが、すぐに別の盾を持った衛兵が補充され、いたちごっこだ。
「ねぇ、ツキ! なんか良い案ないかな!?」
突き出される槍を避けるだけで精一杯なタイヨウ。リュックに入ったままのツキは、けだるそうに顔を出した。
「そんなものないよ。諦めて捕まってから考えな」
ツキはそもそも捕まったところでどうとでもなると言いたげに、そう言い切っては、またリュックに顔をうずめてしまった。
セロのハサミが吹き飛ばされた。
「ごめん。セロさん」
結局、タイヨウたちは槍を向けられたまま、地面に座らされた。
「まったく、この代償は高くつきますよ」
受付の女は、ズレた眼鏡を人差し指と親指で戻し、ため息を吐いた。
「ねぇ、なにしてるの?」
「なにって、不届きものを――」
受付の女性が振り返った先に立っていたのは、路地で助けたあの子供だった。
白いフードで、相変わらずその顔は見えない。受付の女性は、振り返ったまましばらく固まっていた。
「ねぇ、なにしてるの?」
「あ、あなた、は誰ですか!?」
震えた声。受付の女性は、そのフードの子供を後ずさりながら指さして叫んだ。
「分からない?」
フードの子供は、唯一見える口元に笑みを浮かべて、受付の女性に聞いた。




