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図書館は、都市でも一番、目立つ場所にあった。
開かれた本の銅像が一番に眼へと入った。
「タイヨウさま。行きますよ」
定期的にページがめくられるギミックに関心していると、既にセロは中へと入っていた。
図書館という名だけあって、室内には、本が棚に所狭しと並べられていた。
室内は本以上に人が多く、受付には多くの人が並んでいた。
「ねぇ、もしかしてあの受付並ばないと?」
「はい。本になってるような情報なら受付せず、好きに見られるんですが」
タイヨウたちの求めているのはぬえの居場所。本に載っているわけがなかった。
「じゃあ、並ぶかぁ」
列は、入り口から何度もまがるようにして続いていた。そんな列の最後尾に並んだ。
これは一時間とかじゃ済まないだろう。そう思ったタイヨウたちだったが、列は意外にもすぐに進み、一時間ほどで複数ある受付のひとつまでたどり着いた。
「お待ちしておりましたタイヨウさま、ツキさま、セロさま」
「えっ!?」
受付に居たのは黒髪の女性だ。丸眼鏡の理的で澄ました顔で、彼女は名乗ってもいないタイヨウたちの名前を言った。
「どうして、名前を?」
「ここは、情報都市アバロンですよ?」
彼女は眼鏡をかちゃりと直してそれだけ言えば十分とばかりに口を閉じた。
タイヨウたちのことなど、とっくに調べがついているというのは、その情報の信ぴょう性は高まったが、普通に怖い。
「えっと、それじゃあ、ぬえの居場所は分かりますか?」
「はい。ですが他人の個人情報ですので、対価が必要です」
「対価……」
最初に言っていたやつだが、セロにはなにか当てがあると言っていた。
タイヨウがセロのほうを見ると、セロはソーイングセットから、丸められた羊皮紙を取り出した。
「これを」
「はい、確かに」
受付の女性は、その羊皮紙の内容を確認することなく、受け取り逆に一枚の紙を取り出した。
「こちらが、ぬえの現在位置になります。移動しますと、地図も更新されますのでご安心を」
「ねぇ、なに渡したの?」
表情ひとつ変えず、セロは代わりに受け取ったその地図をソーイングセットにしまった。
「私の設計図です」
「え、それ渡して良かったの?」
「はい。それが一番効率的ですから」
セロの表情は読めない。だが、タイヨウはその声のトーンが少しだけ、ほんの少しだけ下がっていることに気が付いた。
セロにとって設計図はいわば自身そのもの。そしてマスターとのつながりそのものだった。
これを渡すことは、自身の存在を売り渡すことと同義だ。
だが、それでも、この取引は必要だった。
マスターの最期の願い。それを叶えるためなら、セロにはそんなものどうだって良かったんだから。
「すみません! この取引キャンセルで!」
「タイヨウさま!?」
受付を離れようとしたセロは、慌てて振り返った。
タイヨウは受付に身を乗り出して、奥に持っていかれようとしている羊皮紙を奪い返そうとしていたからだ。




