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「セロさん、ちょっと待って」
図書館に向かう途中、タイヨウは突然セロについていくのを辞めてどこかへ向かった。
向かう先とは別の道、地面にうずくまるようにした子供がいた。
「大丈夫?」
白いフードを被って、目元は見えない。地面を手で探っていて、何かを探しているようだったが、道行く人はまるで見えていないかのように無視して歩いていた。
「えっと、ペンダントをなくしちゃって」
「どんなの?」
「赤い、宝石の付いたやつ」
声は中世的で、少年とも少女ともとれる声だ。顔が見えないのも相まって、子供ということしか 分からない。
「分かった。一緒に探そう」
タイヨウは、その子供と同じように、地面に座り込んで、周りを探す。
「タイヨウ様、何を?」
遅れてやってきたセロは、地面に這いつくばるタイヨウを見て、怪訝な声を出す。
「この子がペンダントなくしちゃったから探してるんだ」
「そうでしたか、では、私もお手伝いいたしますね」
ひたすら全員で地面を探すが、人通りも多く、中々見つからない。
「ないね~」
「あの、忙しいでしょうし、あとは一人で探します。ありがとうございました。手伝っていただいて」
「ううん。一度首を突っ込んだんだから、最後まで付き合うよ」
「タイヨウ様。図書館で落とし物について調べては?」
「確かに! それが良いよ。どうかな?」
「あ、えっと……それは」
フードの子供は、なにか言いにくそうに、首を振った。
「そっか、なら、なおさら頑張って探さないとね」
大通りは一通り見た。路地裏まで探しに行き、ごみ箱の中まで見てもペンダントはない。
「うーんどこだろう……」
「タイヨウ、あれは?」
ツキが、タイヨウの顔の前まで伸びて、上を見上げた。
釣られてタイヨウが顔を上げると、電柱にペンダントが引っかかっていた。
「ねぇ! あれじゃない!?」
「あ、あれです! ……でも」
ペンダントは、カラスにでも持っていかれたのか、電柱のてっぺんに引っかかっていた。
「上に有ったんだね。どおりで見つからないわけだ」
「見つかったけど、あんなところじゃ」
納得したタイヨウに反して、フードの子供は、悲しそうにうつむいた。
「ん? あぁ、あのくらいなら、ちょっと待っててね」
タイヨウは電柱から出っ張った鉄の棒に足をかけると、軽快に上って、あっと言う間に頂上まで登り切った。
「ゲット!」
てっぺんからは街の全貌が眺められた。普通の西洋風な街並みの中で、特に異彩を放っている建物が遠くに見える。
巨大な本の像。コロッセオのような外見の建物が、街の中心に建っていた。
「はい、もうなくさないようにね」
「ありがとう、ございます。この御恩は必ず」
「いいよ、気にしないで」
口をぽかんと開けていたが、ペンダントを受け取ると、思い出したように、難しい言葉で感謝を並べた。
「ごめん、時間取らせちゃって。行こっか!」
「いえ、時間はいくらでもありますから」
なんどもこちらに頭を下げる子供に見送られて、タイヨウたちはまた図書館を目指した。
道草をしたというのに、セロはむしろどこか微笑んでいるような気がした。




