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セウストとヘッダが止まった。
タイヨウは上を見上げて、それが壁ではないことに気が付いた。
目の前に広がる壁は塔だ。その大きさから壁に見えるだけで、よく見れば、円柱の形をしていた。
雲と砂埃で見えないが、塔の上は皿のように町が広がっていた。
「おい、着いたぞ!」
タイヨウたちの目指していた知恵の都市アバロンは、この塔の上だ。
塔に開けられた大きな入り口には、これまた大きな門が設置されており、堂々と開け放たれていた。その大きさは、セウストも軽々と通れるほどだ。
町の入り口には、大抵検問があるのだが、ここにはそういうものは一切なかった。中心に上へと昇るためのエレベーターがあるだけだ。
まるで、業務用の昇降機のような見た目。当然全員が乗り込んでも余裕で、それが塔の中に複数あるのは壮観だ。
「直通で行って良いよな?」
「はい。私たちはアバロンにしか用はありません」
エレベーターには、複数ボタンがあり、途中の階層にも止まれるようだった。
エレベーターが閉まる。鉄格子で出来た丈夫そうな扉だ。
扉の隙間から、階層ごとの景色が見えるが、階層ごとにその景色は様々だ。
オフィスや倉庫のような階層はもちろん。遊園地やサッカー場。草原や、森、果てには海なんて階層もあった。
「すごいですね。ここだけで、なんでもできそう」
「それを目的に作られたのが、この塔らしいですよ」
「そうなんですね」
セロはもうヘッダから降りていた。サルビアは外の景色に目を輝かせていた。
タイヨウもサルビアを習って、階層ごとに全く違うその景色を楽しんでいた。
次々と変わっていく様は、まるでテレビのチャンネルを切り替えているみたいだ。
それからしばらく昇るとついにエレベーターは止まった。
「だいぶん上に来ましたね」
タイヨウは、耳に詰まった空気を抜く。鉄格子が音を立てて開いた。
「タイヨウたちの目的地は、あれだよな。図書館だろ?」
「図書館?」
「はい。図書館で、情報の授受は出来るんですよ」
「そうなんですね。セウストさんたちは、どうします? ここまで来てもらいましたけど」
「そうだな……特に用もねぇから、俺らは塔で買い物してるわ。確か72階にいい工具の店があるんだよな。おい、セルビア行くぞ」
「俺は……」
セルビアは、タイヨウとセウストを交互に見てその場でうなる。タイヨウたちについていきたい気持ちと、工具を見たい気持ちがせめぎあっていた。
「帰りも一緒だし、講義、見てきなよ。あとで何買ったか教えてくれたら嬉しいな」
「うん! 分かった!」
タイヨウはしゃがんで、セルビアに目線を合わせて優しく言った。
「んじゃ、決まりだな。用が終わったら、適当に見つけてくれ」
「はい。それじゃあ、行きましょうか」
再びエレベータに乗って降りていく三人を見送ったタイヨウたちは、セロの案内のもと歩き出した。




