31
「ま、まぁ僕たちも誤解が解けたなら、もう大丈夫ですから。セロも大丈夫?」
セウストがあまりにも強く怒るものだから、タイヨウにあった怒りの気持ちなどなくなっていた。
「はい。無傷です」
「なぁ。あんた、何者?」
ヘッダもセウストどうよう、フロントガラスがディスプレイとなっており、そこに映った眼はセロを見ていた。
「私はマスターによって作成された自立思考型アンドロイド。セロでございます」
タイヨウたちに向けたものと同じ自己紹介をしてセロはお辞儀をした。
「そうか」
口数の少ないヘッダは、それだけで何を納得したのか、目を瞑ってしまった。
「……なぁ、お前らはなんでここに来たんだ?」
「え?」
サルビアが、タイヨウの服の裾を遠慮がちに引っ張った。
涙で潤んだ瞳に見上げられると、言いようもない感情が込みあがって、自然と言葉尻が優しくなる。
「えっと、僕らはアバロンってところを目指してて、道中尽きかけてた食料を、セウストさんから分けてもらうために寄ったんだ」
「そっか。なぁ! セウストの兄貴! 食料ってどこだ?」
「そうだ、慌ててきたもんだから、ほれ」
離れたところに放置あされていた木箱を持ってきたセウスト。中には缶詰がぎっしりと入っていた。
「こ、こんなに? 持っていけないですし、申し訳ないですよ」
「いや! これは全部貰ってくれなきゃ、申し訳が立たねぇ!」
「でも、持ち運ぶにも……僕のバッグに全部は入りませんよ?」
「な、なぁ、だったら俺達が運べばいいじゃん!」
するすると器用にセウストのアームを上るサルビア。
「ヘッダの兄貴に乗せれば、いいじゃん。アバロンだったら兄貴たちの足なら余裕だろ?」
「それもそうだな! よし、そうしよう! おいヘッダ! 起きろ! 仕事だ!」
「む?」
ヘッダの画面が光る。
「……なんか、僕らの知らないうちに話が進んじゃったね」
ここの人達はなんとも押しが強い。気付けば旅の計画が進んでしまっていた。
その日はここまでの旅の疲れもあるだろうと、ここで一泊していくこととなった。
「そういえば、サルビアちゃんは、人間、なの?」
夜、僕らは休憩所の一角を借りて眠ることとなった。当然といって良いのか分からないが、サルビアも一緒だ。
「ちゃんって、サルビアでいいよ。そうだ、俺は人間だ」
サルビアはつなぎを脱いで、肌着でソファに寝転んだ。
「まだ俺が赤子の時に兄貴たちに拾われたんだ」
「そっか……」
「別に同情はいらねぇ。俺はここでの生活に満足してんだ」
それは彼女の本心だった。タイヨウは自身を恥じた。かってに身の上に同情されるなど、タイヨウだっていやだというのに、無意識にとはいえ人にしてしまうなんて。
幸いサルビアが気にした様子はないが、それでも不快な思いをさせてしまっただろう。




