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「分担しましょう!」
「無茶だよ! 僕が戦う!」
セロはすぐさま背後に向きを変えた。セロはアンドロイドだ。だがその容姿からとても戦闘ができるようには見えない。
「ご安心を! 私はマスターの最高傑作です。戦闘も標準機能です」
セロがソーイングセットを開き、中から取り出したのはハサミだ。鞄の大きさに似合わない両手を広げた長さと同じくらいのハサミ。
布の裁断に使われるような、刃の長いハサミだ。柄まで全部が金属で出来た造形は光を反射して美しい。
「タイヨウ様は前を!」
そうだ、見とれている場合ではない。なにせ警戒するべきは聖女だけじゃない。タイヨウらの前からは潜在的な恐怖が、まさに音を立ててやってきていたのだから。
十字路からその首が現れた。俯いた頭をもたげて現れた。長いクビは途中でがくんと曲がっていた。
身体が現れた。ギャリギャリとなっていたのは、足の代わりについていたキャタピラだ。
「待って、もしかして」
あれは首じゃない! 腕だ。一本の腕。錆びて塗装も剥がれた黄色い腕。
「クラトスさん!」
「ん!? タイヨウじゃねぇか! どうしたってこんなとこに?」
点滅するディスプレイ。それはあのとき、出会ったオートマータのショベルカーだった。
「クラトスさん! どうしてはこっちのセリフ、っていやそれより後ろから!」
金属音が背後から響いた。セロがハサミを使って聖女を抑えていたが、その体格差から抑えられず、かといってハサミで斬れるわけもなく、じりじりと押されていた。
聖女の攻撃方法はひどく単純。その体を使った圧殺。しかし、その巨大な頭と、電柱すら削り取る硬度は、十分凶器だ。
「なんだ、あれに眼つけられたのか。仕方ねぇ。乗りな!」
「はい!」
疑問など後回し。自動で開いた操縦席に飛び乗ると、クラトスは聖女めがけて走り出した。
「嬢ちゃん! 乗りな!」
キャタピラとは思えない速度で急接近したクラトスは、聖女と相対するセロに叫ぶ。
セロはタイヨウたちを一瞥するとハサミを仕舞い、軽快な動きで聖女から離れて走りだした。
聖女がその背後を追いかけた。
「OK!」
助手席の扉が開き、せろが 乗り込むと同時に、クラトスと聖女がぶつかった。
その巨大な腕は聖女をがっちりと抑え込む。力の差はない。拮抗していた。
「俺に勝つなんざ、百年早いわ!」
エンジンが回転して排気ガスが黒く噴き出すと、その巨大な隻腕で聖女を吹き飛ばした。
聖女が転がっていった。なんとも力業だ。だがかっこよかった。
「よし、逃げるぞ!」
クラトスは、聖女が起き上がらぬうちに、エンジンを吹かせて走りだした。




