25
さて、どうしたものですか。
部屋に戻ったセロは、階段を下りながら機械仕掛けの脳みそを回転させた。
顔も分からない、当てもない存在を探すなど、至難の業だった。
気づけばもう管制室。
結局。あてはひとつしか思いつかなかった。
セロはパネルの前にあるレバーを引く。パネルが変形して、中から小さな鞄が出てきた。
その大きさは片手で持てるほどのもので、メイド服同様白のフリルがあしらわれている以外は、紺色のシンプルなものだった。
マスターの最期の願いを叶える。それが私の、最後の使命だ。
セロは鞄を手に取ると、マスターの骨を優しく抱きしめて管制室を出た。
「お待たせいたしました」
タイヨウたちが待っていると、セロは戻って来た。手には小さな鞄だけ。
「お帰りなさい! それで、その中に探す手段があるんですか?」
こんな大きな機械の上に住んでいるんだ。きっと聞いたこともない道具があの中に入っているんだろう。
「私が直接探しに参ります。これはただのソーイングセットでございます」
だからこそ、その回答は予想外だった。
「え! 裁縫道具って、ていうか外、出れたんだ」
「はい。今回の案件では、それが最適でしたので」
てっきりこの中でしか生活できないとか、そういうのがあるのかと思っていた。
だが、それが分かったところで、疑問は解決していない。
「で、どうやって解決するの?」
「知恵の都市バビロンです」
「バビロン?」
「あそこね。確かにそれなら」
「はい。可能かと」
「ちょっと! 僕を置いて話を進めないでよ!」
ツキもなぜか納得しているが、タイヨウにはほんの少しも理解できなかった。
「早急に僕への説明を求めます!」
「失礼いたしました知恵の都市バビロンは、文字通り知恵の集まる都市。それもどんな情報でも必ず集まります。いわば情報屋の都市なのです」
「それでぬえの居場所を知るってこと?」
「そうです」
「でもさ、それってただで聞けるものなの?」
「大抵の情報は無料で開放されてます。個人の情報となると少し面倒ですが……そこは私にあてがあります」
「そのあては――」
「内緒です」
人差し指を口元に当ててセロは微笑んだ。
「――分かったよ。どうせほかに当てもないし、行きましょうか。バビロン!」
「ありがとうございます」
セロはタイヨウへ向けて、最大限の感謝とともにスカートの裾を掴んで礼をした。
目指すは世界最高峰の知恵の都市バビロンだ。




