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「悪質なお遊び……というわけではなさそうですね」
いたずらなんて、そんなことわざわざするわけない。
「いったいどうして」
確かにあの袋にタイヨウは黒い果実。サマリーを入れた。袋を間違えるなんてミスは起きない。
「あり得ない!」
ツキが叫ぶ。それもそうだ。あの袋はタイヨウが渡してから、ずっとツキが肌身離さず持っていた。
寝るときでさえリュックから離れないツキの目を搔い潜ることなんて、タイヨウですら不可能だった。
「いや、あの時だけなら」
「あの時?」
この袋を持ってから、たった一度だけツキが離れたときがあった。
「ツキ、あの子供に襲いかかった時なら、すり替えることもできたんじゃない?」
「……そうね、それしか、考えられない」
ただ、タイヨウには分からないことがあった。
「でも、どうして。わざわざあれを?」
あの森の奥でしか採れないものではあるが、同じ大きさの岩のかけらまで用意して盗むほどの価値があるのか?
「誰か、相手に心当たりはないんですか?」
セロの疑問に頭をかしげた。
あれを採って来たと知っている人など、そう多くない。フウロとその側近にウッド。だが、彼らに取るメリットなどないだろう。
「――あ」
「何か、心当たりが?」
「いや――心当たりってほどじゃないんだけど」
タイヨウはツキが子供を襲った際に、その騒動の中で見た茶色い獣の事、その獣が森に出発する前夜にも表れたことを話した。
「赤い目の獣ですか……無関係。とは言えなさそうですね」
「それに、あの見た目、どこかで――」
赤い目に茶色い毛を生やした獣。タイヨウはそれを絶対に見ていた。
「あ――あれだ、あの塔で見たんだよ」
指差したのはもう跡形もなくなってしまった永塔婆。
「茶色い獣。もしやぬえか」
「そう! 今思い返してみればぬえとそっくりだったよ。けどどうして」
「あれなら納得。あのときから隙があれば鞄事盗むつもりだったわ。そういう目をしてたもの」
ツキは盗まれたことに気づけなかったことを悔しそうに歯噛みした。
「でもどうしよう」
ぬえの行方は分からない。あの町に入るのも不可能だろう。ウッドがまた助けてくれる保証もない。
もう一度あの実を採りに行くのは、不可能に近かった。
「なるほど。そのぬえとやらの居場所が分かればいいんですね? 少々お待ちください」
セロは特に焦った様子もなく、部屋の中へと入って行った。




