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異世界見浪記  作者: 天空 浮世
黒色の果実は夜に咲く

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「ツキを?」


「そうだ。それが我々、冒険者としての責務なんでな」


 不遜だ。


「断ったら?」


「実力創始に出ざるを終えないな」


「やめて!」


「嬢ちゃんは下がってな」


 フウロが止めようと冒険者の腕を抑えるが、振り払われ、その場に倒れてしまう。


「おい、兄ちゃん」


 漁師のゲランがフウロの手を取り、冒険者を睨むが止まることはない。

 

「さぁ、寄越すんだ」


 もう、止まれないところまで、冒険者は来ていた。


「断る」


 彼は、タイヨウの逆鱗に触れたんだから。


 タイヨウはふらりと近づくと、拳を振り抜いた。

 警告も容赦もない一撃。

 

 冒険者が吹き飛ぶ。幸い先ほどの騒動で人はまばらで、誰かに当たることなく、冒険者ははるか遠くまで地面を跳ねながら飛んで行った。


「タイヨウ……?」


 タイヨウは頬に付いた血を拭う。


 ごめんね。


 言葉にはせず、口を動かして呟くと、タイヨウは町から逃げ出した。


 誰が呼んだのか、衛兵が来た時には既に遅かった。

 そこに残っていたのは大声で泣くフウロと、遠くでピクリとも動かない冒険者の体だけだった。


 「随分と派手にやったのね」


 リュックから顔を出したツキ。タイヨウは若干気まずそうに頬を掻いた。


「うん。ついカッとなっちゃって。あ、でも後悔はしてないよ! 僕の家族を奪おうとしたんだもん」


 でも、あの町にはもういけないだろう。家族もいない中で、一人で頑張る彼女を思うと少しだけ残念だった。


「それに、目的も達成できたしね!」


 心残りはありつつも、タイヨウはアンドロイドのセロが待つ蜘蛛へと歩き始めた。


「戻りました!」


 蜘蛛の脚から上へと昇ると、最初と同じようにセロは扉の前に立っていた。


「おかえりなさいませ。サマリーは手に入りましたか?」


「はい! こちらです!」


 タイヨウはツキにリュックから袋を取り出してもらい、セロに渡した。


「えっと……」


 微妙な反応。もしや数が足りなかったか?


「え、それですよね? もしかして足りなかったですか?」


「その……」


「何? もしかしてまだ何か必要って言うんじゃないでしょうね?」


「そうではなく……見てもらったほうが早いかと」


 セロは袋から中身を自身の手の上に取り出した。


「えっ!?」


 タイヨウとツキは同時に驚いた。


 コロンと袋から出てきたのはあの黒い実ではなく、雑に削られた岩のカケラだった。

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