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「んう……? あれ、タイヨウ?」
馬車が屋敷に着くと、やっとフウロは目を覚ました。
既にウッドは降りて自宅へと帰っていた。馬車に居たのは、僕と側近の騎士だけだ。
「あれ? 私森に行って」
「待っててくれてありがとう。無事採れたよ」
タイヨウはリュックからサマリーを取り出し見せた。
「ほんと!? けがはない? もう森行かない?」
彼女は寝ぼけまなこからぱっと目覚め、タイヨウの体を触り安否を確かめる。
「大丈夫、怪我ひとつしてないよ」
ほんとうは 危なかったが、わざわざ言わなくていいだろう。
「そうだ、これ」
袋に入ったお守りを返す。
「え、いいのに」
「ううん。これ大事なものでしょ? それに――」
このお守りの効果は本当だ。それなら今後も彼女を守ってくれるだろう。
その日もタイヨウはフウロの家に泊まった。
先日同様、窓の外からふと庭を覗いた。
「えっ?」
庭になにかいる。毛むくじゃらの生き物が、目を光らせてこちらを見ていた。
こちらが見ているのに気が付いたのか、四足歩行で駆け足に逃げてしまった。
「ツ、ツキ!」
「ん? どうしたの。そんな慌てて」
タイヨウは慌てて背中のツキに声をかけたが、ツキはリュックの中だった。
「今、そこに何かいた!」
「野生の動物かしらね。こんな町の中心にいるのは変だけど。明日一応伝えといたら?」
「うん。そうするよ」
その日は結局何か分からなかった。このまま寝たら夢に出そうだ。なんて思いながらタイヨウは眠りについた。
案の定、タイヨウは夢を見た。
窓から何かが覗いている夢だ。赤い目。月光が逆光で毛むくじゃらの体は真っ黒で、赤い目だけがくっきりと浮かんでいた。
翌朝。タイヨウは起きてすぐ窓を確認した。
幸い窓の鍵は締まっていた。そもそも、もし本当に何かが来ていたとしたら、ツキにバレているだろうし、余計な心配だった。
フウロは既に食卓へ座っており、そこには当然のようにタイヨウの食事も用意されていた。
「ねぇ! 今日は暇よね?」
座るや否やフウロがそれは楽しそうに聞いて来た。
「うん。だからもう――」
「それなら、この町の案内してあげる! 今日は市場が開いているのよ!」
遮られてしまった。たまたまかな? まぁ数日遅くなったところで問題はないだろう。
「うん。それじゃあ案内お願いしようかな」
タイヨウが了承すると、フウロは立ち上がって嬉しそうにその場で跳ねた。




