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着弾した緑の液体は、ムカデの顔面に根を伸ばし、腕ほどの太さの蔓となってムカデに巻き付いた。
確実に速度は下がっているが、以前速い。
「あれは……こっちだ!」
ウッドが見つけたのは地面から飛び出した緑色の棘。それは腰ほどの高さまであり、等間隔で並んでいた。
「その棘には絶対触れるなよ!」
棘の隙間を走って行く。タイヨウたちが走りすぎ、ムカデもその後を追って走った。
ムカデにとってその程度の大きさの棘など障害物にもならない。
ムカデが棘を押しのけて走る。何本も生えた棘が何本か倒されたとき、地面から大きな口が起き上がり、ムカデを挟み込んだ。
「な、今度は何ですか!?」
ムカデは突然現れた緑の監獄に拒まれる。暴れるほどその締め付けは強く、緑の口の端に付いた牙から見えるその姿はどんどんと見えなくなっていった。
「トラップ草だ。あの棘に触れると、あんな風にしたからバクっと一口だ」
「じゃあ、助かった?」
「あぁ、あのムカデでも、逃げられんだろ。おっと変に動くなよ? あいつらは群生するんだ。俺たちまでああなるぞ」
タイヨウたちの周りにはまだ無数の棘が地面からその顔を覗かせていた。
いまだ若干の動きを見せる牢を背後に、タイヨウたちは棘に触れぬようその場を後にした。
森を抜けると、タイヨウたちを日差しが眩しく歓迎した。
路肩には行きではなかった馬車が停まっており、御者台には見覚えのある騎士が座ってこちらに手招きをしていた。
「お疲れ様です。目当ての品は入手できましたか?」
「はい。ありがとうございます」
「それは何よりです。疲れているでしょう。どうぞ中へ」
馬車の扉を開けると、中でフウロがもう一人の騎士の膝を枕にして寝ていた。
フウロを起こさぬよう軽く会釈ダケする騎士。それに返すように音を立てず乗り込む二人。全員が乗ったのを確認した馬車はゆっくりと動き始めた。
「にしても、危なかったな」
馬車に揺られる室内で話を切り出したのはウッドだった。
「ですね。流石の僕も死を覚悟しましたよ」
「な。でもムカデの対処を知ってたのは意外だったな。先になんか聞いてたのか?」
対処法?
「なんの話ですか?」
「あ? あのムカデが目から出す不可視の光線の対処に銀が必要だろ? じゃなきゃあのとき光線で動けずそんまま死んでたんだし」
銀……そんなもの持って――あ。
「もしかして」
タイヨウはポケットから小さな袋を取り出し、開けた。
「あのとき、足に電流みたいなのが走って、動けるようになった気がしたんですよね」
中にあるのはメダル。昨夜は暗くて分からなかったが、それはたしかに銀色に輝いていた。
「うん。銀にみえるな」
「それは、お嬢様の家紋ですね。確かお嬢様がご両親から送られたものです。特に特別な加工がされたものではないですが。銀で作られてるのは確かですね」
「そっか」
それは、まさにただのお守りだった。だが、タイヨウの命を救った。それを考えればそのお守りの効果は確かなものだった。




