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異世界見浪記  作者: 天空 浮世
黒色の果実は夜に咲く

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「よし、覚悟はできたか?」


 森の前で最後の確認。タイヨウと同じくリュックを背負ったウッドが装備を点検した。


 タイヨウの装備はリュックのみ。武器はその素手だ。


「これを使え」


 渡されたのはスプレー缶。ラベルもなにもないむき出しだ。


「それを体に賭ければ植物には襲われない」


「植物には?」


「あぁ。知らないのか? この森は植物と同じくらい、虫が厄介なんだ。俺の傷も虫にやられた」


 初耳だ。だが、虫ならまだどうにかなるだろう。


「どうした、やめるか?」


「いえ! 行きますよ!」


 植物よりは、打撃でも戦えそうだ。そんな甘い考えでタイヨウは頷いた。


 森の中に入ると、途端に薄暗くなる。まだ朝方だったはず。


 森の木々が空を覆うように枝を広げていた。鬱蒼とし、視界も悪い森のなか。時折聞こえる虫の声に精神が張り詰めた。


 植物は、スプレーのおかげでその動きを見せない。今のところはただの薄暗い森だ。


「お前の探してるサマリーはこの森でも相当奥にある。覚悟するんだな」


 周囲を警戒しながら素早く進む。今のところ虫には出会っていない。


 だが相手は虫だ。その大きさから、どこにでもいることは予測できた。もしかしたら既に近くにいるかもしれない。そう考えると、気が気じゃなかった。


 進むにつれてより森は濃く暗くなっていく。


「止まれ!」


 鋭いウッドの声、引っ張られるようにして倒木に身をかがめた。


 どしんと、血を震わせる音。それは、周期的に聞こえる。


「絶対に顔を出すなよ」


 ウッドはタイヨウの頭を是面すれすれに押し込む。その声は冷静に聞こえるが、若干震えている気もした。


 音が近づいてくる。地響きが大きくなり、その震源地がついに真横に来た。


 呼吸が詰まる。キリキリキリとまるで金属をこすり合わせたような不快音。


 タイヨウは気になって、こっそりのぞいてみることにした。


 丸太の端から震源を見ると、タイヨウは思わず声を出してしまいそうになった。


 そこに居たのは大きなバッタ。その大きさはちょっと大きいなんてものじゃない。


 その大きさは大型トラックと遜色ない。まさに生きる重機だ。ガラスのような瞳が薄暗く光る。


 その眼はどこを見ているのか分からない。不気味さがあった。


 幸い、巨大バッタはこちらに気づかず、その鉄骨のような足で地面を震わせて跳んで行った。

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