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異世界見浪記  作者: 天空 浮世
黒色の果実は夜に咲く

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 傷口に落ちた砂は、自我を持つように傷を覆い尽くした。


「おい、大丈夫なのか。これ?」


 心配そうな男の声。傷はもう完全に見えなくなっていた。


 もごもごと動く砂が完全に止まると、砂がさらさらと零れ落ちた。


「マジか」


 砂が落ちると、傷のあった個所は、もうどこに傷があったか分からないほどに完全に修復されていた。


「すげぇすげぇ! やるなお前!」


 傷のあった個所を何度もさわり、男は歓喜のままタイヨウの背中を叩く。


「それはっよかっ、良かったです!」


 叩かれる度、息が漏れる。


「タイヨウだったよな」


「はい」


 ひとしきり喜びを終えた男は、ベッドに腰を下ろした。


「俺はウッドだ」


 差し出された手。とても大きく、男らしいごつごつした手だ。


「えっと?」


「一緒に森に行くんだろ? 名前くらいは知っとかないとな」


「行ってくれるんですか!」


「なんだ、行かないのか? ならこの握手はなしだ」


「行きます行きます! よろしくです!」


 戻されそうになった手を慌ててつかみ、振り回す勢いで握った。


 一度その日は解散し、翌朝向かうこととなった。


 「あ、お帰りなさい!」


 ぼーっと外で待っていたフウロに迎えられて、屋敷に戻った。


 その日の夜、部屋の扉がノックされた。


 扉の先にはフウロ。その顔は不安で満ちていた。


「どうしたのこんな夜に」


 フウロは口を開かない。彼女は何かを包むように持った手を差し出した。


 タイヨウはその手の下に手を差し出した。


 ぽとりと彼女の手から落ちた。


 それは小さな袋。上に付いた口がきゅっと絞められていて、中には何かが入っていた。


「明日、絶対生きて帰ってきてね」


「え、待って! これ――」


 フウロはそれだけ言って、走って行ってしまった。


 部屋に戻り、袋を開けた。


「なんだろこれ」


 袋に入っていたのは、一枚のメダル。見たことのないものだ。少なくともこの近くで使われているものではない。


 月明りに照らすと、メダルに大きな木の刻印がされているのが分かる。


「どこのメダルだろうね?」


「さぁ……初めて見るわね」


 ツキも知らないその謎のメダル。タイヨウは袋に戻すと、ポケットにしまった。


 効果などはなさそうだが、それでも、彼女がわざわざくれたものだ。


 もしかしタラすごい効果があったりするかもしれないしね。


 タイヨウは鞄を背負ったまま、ベッドに横になった。


 明日は、ついにあの森へ入る。


 わくわくと不安の入り混じった心は全然落ち着かなくて、その日は中々寝付けなかった。

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