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異世界見浪記  作者: 天空 浮世
黒色の果実は夜に咲く

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 馬車に揺られ行きついたのは、豪勢な屋敷だった。


 タイヨウが向かっていた町の中心にある屋敷。


 その屋敷は町の中にあるどの建物よりも大きかった。

 

 門前には、護衛と同じ格好の騎士が二人。


 高さは永塔婆(エントゥーバ)には劣るが、横幅はそれ以上だ。


「ようこそ! ここが領主である私の家よ!」


 連れていかれたのは、執務室のような部屋。


 少女は足を組んで精一杯体を大きく、尊大に見せながら椅子に座った。


 左右には馬車から同じ護衛が二人。


 その幼さで領主? 両親は? という疑問は、彼女の後ろに、飾られた三人家族の書かれた絵画が物語っていた。


 それをわざわざ口にするのは野暮というものだ。


「えっと……」


 タイヨウがどう反応するか悩んでいると、それに気付いた騎士が少女に耳打ちした。

 

「とりあえず、食事にしましょう。お嬢様」


「そ、そうね! 食事にしましょ! うちのシェフの料理は別格よ!」


 なんとも背伸びした物言い。それがほほえましくも、どこか無理をしていそうで、不安に見えた。


 この人数には有り余るほど長い机。


 タイヨウは背負ったリュックが背もたれに当たらないように、椅子に浅く座った。


 料理を待つ間、太陽たちは他愛もない会話をしていた。


 少女の名前はフウロ。隣町からの帰り道に山賊に襲われたらしい。


「一週間くらい前に、この町の空をすごく大きな鳥が飛んで行ったの。それで近隣に被害が無いかの確認に行ってたのよ」


 大きな鳥……なんとも聞き覚えのある話だ。


「鳥って、どんなの?」


「真っ黒で、すっごく不気味だったの。もしあれがこの町に狙いを付けたらって思うと、ぞっとするわ」


「そ、そうなんだ……それは怖いね」


 完全にあの影法師だ。確定だ。


 タイヨウは白々しく相槌を打つ。


「お待たせしました」


 料理がメイドによって運ばれてきた。


 肉料理がメインで、野菜がほとんどない。


 まるで、子供の考えた最強の献立だ。


「なんていうか、バランス悪い?」


「別に私が野菜嫌いだからとかじゃないからね! この近くで野菜を育てるのは危険なのよ」


 野菜を育てるのが危険? そんな場所……いや。


 タイヨウの中であの森が思い浮かぶ。


「もしかして、あの森のせい?」


「知ってるのね。その通り、タイヨウもあの森には近づかないことね」


「あ~……」


 タイヨウはしぶしぶここの近くに来た理由を話した。


「サ、サ、サマリーですって!? そんなの無理よ! 諦めてここで過ごしなさい。ね?」


 本当に心配した表情。眉が垂れて、今にも泣きそうだ。


「ごめんね。危険なのは分かってるけど……」


「……どうしても、それが必要なの? 私がいくら止めても?」


「うん。ごめんね」


 フウロはうつむいたまま、部屋を飛び出してしまった。

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