13
セロに見送られて蜘蛛を出て、一週間が経った。
向かう先はサマリーの実が実る森。それはまさに魔境だった。
森の前で立ち止まったタイヨウの横を大型の猛禽類が森の上を飛んで行った。
そして森に入ってすぐ、下から伸びてきた植物の蔓によって、森へと引きずりこまれていった。
「ねぇ、この中に入るの?」
その森は植物の楽園。生物の頂点に植物が立つ場所だった。
「サマリーはこの森の最深部に生えてるからね。昔は採りに行くものも多かったけど、時代ね」
タイヨウは肌感で理解していた。
今のタイヨウでは、ここに入って二分と持たずに植物の栄養となってしまうだろう。
一度作戦を練りなおそう。
そう思ったタイヨウが近くの町まで歩いていると、近くから悲鳴が聞こえた。
「ツキ!」
「ここから右、森の中ね」
タイヨウは街道を外れて、森の中へと入った。
悲鳴は女性の声だった。それも人間だ。急がなければ最悪の事態も考えられるだろう。
少し走ると、焦げ臭いにおいが漂ってきた。
松明の火。一台の馬車が山賊に囲まれていた。
馬車を守るのは、全身鎧に身を包んだ騎士が二人。盗賊の人数は六人。
圧倒的に不利だ。
「助太刀するよ!」
タイヨウは盗賊の背中に飛び掛かった。
「ぐはっ!」
蹴られた盗賊が、木を何本も折りながら吹き飛ぶ。
「な、なんだてめぇ!」
突然のイレギュラーに慌てる盗賊。
一方騎士はこんな状況にも関わらず、混乱した隙に乗じて、盗賊を斬り伏せていた。
これで三対三。人数遊里のなくなった盗賊など、所詮取るに足らない。
「クソが! お前らかかれ!」
雄たけびを上げながら襲い来る盗賊。
連携も何もない。まるで獣の突進だ。狼のほうがまだマシな連携をする。
錆びたサーベルを避け、脇腹に拳を振る。
それだけで盗賊は呻きながらその場に伏した。
「ありがとう。旅の方、助かった」
剣に付いた血を拭った騎士の一人が話しかけてきた。
兜に薔薇の模様が刻まれている。家紋だろうか、相応に裕福なのは間違いなさそうだ。
「ねぇ、あなた強いのね!」
「お嬢さま! いけません!」
もう一人の騎士の静止を振り解いてタイヨウの前に現れたのは、フリルのあしらわれたドレスを着た少女だった。
先ほど聞こえた悲鳴は彼女のものだったのだろう。
先ほどまで山賊に襲われていたとは思えないほど、少女は元気にタイヨウの周りを動き回った。
なんともしたたかなものだ。
「ねぇ、あなた、私のお屋敷に来て! お礼するから!」
少女は笑顔でタイヨウに手を差し出した。
「お嬢さま!」
騎士たちはなんとも止めたそうだ。それもそうだ。山賊から助けたとはいえ、見ず知らずの旅人。
普通なら多少の金銭を払って解散だ。
しかし、こう誘ってしまっては、断れば相手の沽券にかかわる。タイヨウも断るわけにはいかない。
「それでしたら、お言葉に甘えて」
タイヨウは笑って、彼女の手を取った。




